2024.02.20

特別支援学校の球児たちの挑戦 夢の甲子園への道

普通の若者であれば当たり前の悩みや願望が、知的障がいを抱える球児たちにとっては更なる壁となります。青春時代はあっという間に過ぎ去り、その中で「全力で挑む」という一つの言葉が、彼らにとってはいかに大きな意味を持つか。しかし、コロナ禍の影響で社会は慎重になり、彼らが夢を追い求めることが一層難しくなっているようです。

 

特別支援学校では時として叶わぬ夢に終わってしまう

「野球が好き」という純粋な思いは、誰もが平等に持つことができます。だが、「思いきり野球をしたい」という純粋な願いは、時として叶わぬ夢に終わってしまうことがあります。それが特別支援学校に通う生徒たちの現実です。特別支援学校で本格的な硬式野球に取り組むことは、全国的に見ても稀なケースです。学校が安全面を理由に許可しないことが多く、彼らにとって野球という夢への近道が遮られることになります。同様の理由から、小中学校でも野球をする機会が制限されてしまう子供たちも少なくありません。

 

もう一度夢を追いかける「甲子園夢プロジェクト」

都内の特別支援学校で30年以上にわたって教鞭をとる久保田先生は、知的障がいという言葉が持つ幅広い意味を理解しています。彼の目には、中学時代には軟式・硬式野球でレギュラーとして活躍していた生徒が、特別支援学校では野球を諦めざるを得ない姿を目にしてきました

しかし、久保田先生は諦めませんでした。知的障がいのある球児たちがもう一度夢を追いかける機会を提供することを決意し、「甲子園夢プロジェクト」(以下、夢プロ)を立ち上げました。このプロジェクトは、特別支援学校の生徒たちが甲子園を目指すための練習会として始まり、全国からの問い合わせが相次ぎ、当初11人だったメンバーは40人を超えるまでに成長しました。

 

野球を愛する子供たちが等しくプレーする権利

夢プロだけでなく、久保田先生は青鳥特別支援学校に硬式野球をプレーするベースボール部を設立しました。学校の協力を得て、東京都高等学校野球連盟(都高野連)への加入を申請し、2023年に特別支援学校としては初めての東京都での加盟が認められました。以来、夢プロの活動は仲間に託され、ベースボール部の活動に専念しています。

この挑戦は容易なものではありません。彼らが抱える困難は数多く、それを乗り越えるためには適切なサポートが必要です。久保田先生は言葉だけでなく、実演を交えた指導で彼らの上達を助けています。野球を愛する子供たちが、等しくプレーする権利は、誰も奪うことはできないと、その信念が彼らの夢への道を明るく照らし続けています。

知的障がい者がスポーツをする難しさと可能性

知的障がいを抱える人々が野球や他のスポーツに取り組むことは、さまざまな困難に直面することがあります。まず第一に、身体的な技術や能力の向上に加えて、コミュニケーションや集中力など、認知的な課題があります。知的障がいは、情報の処理や学習能力に影響を与える場合があり、新しい技術や戦術を理解し、実行することが難しい場合があります。

 

コミュニケーションの障壁

スポーツはチームワークや相手との協力が不可欠ですが、コミュニケーションの障壁があると、チーム全体の連携が難しくなります。特に、ボールを投げたり受け取ったりするなど、即座に判断や反応が求められる野球では、コミュニケーションの重要性が高まります。しかし、知的障がいを持つ人々は、コミュニケーションや情報の処理に課題を抱えることがあり、チームメイトとの連携が困難になる可能性があります。

 

社会的な偏見や差別

さらに、社会的な偏見や差別も、知的障がいを持つ人々がスポーツに参加する際の障壁となります。一部の人々は、知的障がいを持つ人々がスポーツに参加することに否定的な見方をする場合があり、彼らに対する誤解や偏見が存在します。これにより、彼らがスポーツに参加する機会や支援を受ける機会が制限される可能性があります。

しかし、これらの困難があるにもかかわらず、知的障がいを抱える人々はスポーツを通じて多くの経験を得ることができます。スポーツは、身体的な健康だけでなく、精神的な健康にも良い影響を与えることが証明されています。特に、チームスポーツでは、自己肯定感や自己効力感を高め、社会的なつながりを強化することができます

 

コミュニケーションや協力のスキルを向上

また、スポーツは、チームメイトやコーチ、サポーターとの関係を通じて、コミュニケーションや協力のスキルを向上させる機会を得ることができます。知的障がいを持つ人々がスポーツに参加することで、彼らの生活の質を向上させるだけでなく、社会全体の多様性と包摂性を促進することができます。

まとめ

障がいのある人がスポーツに参加するためには適切なサポートが必要で、適切な指導者やコーチ、そして理解あるチームメイトが必要です。さらに、社会全体が、知的障がいを持つ人々がスポーツに参加する機会を提供し、彼らの活動を支援する必要があります。彼らがスポーツを通じて自己成長や社会参加を果たすために、偏見や差別を排除し、包括的な環境を作ることが重要です。

 

参考

知的障がいがある球児が目指す甲子園 青鳥特別支援学校が示す野球の魅力(THEANSWER)Yahooニュース

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