2024.04.17

過去から現代への障がい観の変遷:障がい福祉サービスの法的枠組みと地域生活支援の展望 Part7

障がい福祉計画において、サービス提供の目標や地域生活支援の実施に関する事項が必須項目として規定されました。また、障がい福祉計画の見直しはPDCAサイクルに則って行われることが明記され、サービス提供体制の計画的な整備が促されます。同時に、地域の実情に合わせて自立支援協議会の名称が定められ、当事者や家族の参画が法的に保障されました。

 

福祉サービスの範囲

福祉サービスの範囲は多岐にわたり、在宅生活や外出支援から昼間の生活、住まい、訓練、相談支援まで包括的な支援が提供されます。これにより、障がいのある個人が自立した生活を送るためのサポートが地域全体で確保されます。

 

在宅生活を支援するサービス

  • 居宅介護(ホームヘルプ)

身の回りの世話や家事、食事の支援など、高齢者や障がい者が自宅で生活するための支援を提供します。例えば、入浴介助、掃除、買い物などの日常生活の支援が含まれます。

 

  • 重度障がい者等包括支援

重度の障がいを持つ個人やその家族に対して、包括的な支援を提供します。医療、介護、福祉、教育など、多岐にわたるサービスを提供し、障がい者やその家族の生活を支えます。

 

  • 重度訪問介護

重度の身体的または精神的障がいを持つ人々の自宅での生活を支援するために、訪問介護サービスが提供されます。日常生活の世話や医療的な支援など、様々なニーズに対応します。

 

  • 短期入所(ショートステイ)

主に介護者の休息やリフレッシュを目的として、高齢者や障がい者を一時的に施設に入所させます。施設内での生活支援や医療的なケアが提供され、介護者の負担を軽減します。

 

外出を支援するサービス

  • 行動援護

身体的、精神的な障がいや認知症を持つ人々が外出する際に、安全な行動をサポートします。交通手段の利用や道路の横断など、外出時のリスクを最小限に抑えるための支援が提供されます。

 

  • 同行援護

障がい者が外出する際に、同行者が付き添い、必要な支援や安全確保を行います。医療機関や公共交通機関への移動、買い物やレクリエーション活動など、様々な外出活動を支援します。

 

昼間の生活を支援するサービス

  • 療養介護

病気や障がいの療養中に、医療的なケアや生活支援を提供します。病院や診療所などの医療施設内で、安全な療養生活を送るための支援が行われます。

 

  • 生活介護

日中に施設で過ごす高齢者や障がい者の生活を支援します。日常生活の世話やリハビリテーション、社会参加の支援など、生活全般にわたるサポートが提供されます。

 

住まいの場としてのサービス

  • 共同生活介護 (ケアホーム)

高齢者や障がい者が集団生活を送るための施設であり、24時間の介護や支援が提供されます。生活支援、医療ケア、リハビリテーションなど、様々なニーズに応じたサービスが行われます。

2014年からは「共同生活援助 (グループホーム)」として名称が変更され、より個別の支援が重視されるようになりました。

 

  • 施設入所支援

高齢者や障がい者が施設に入所する際に、入所手続きや生活支援などの支援を提供します。施設選びや入所後の生活調整、施設内でのサービスの利用方法などに関する支援が含まれます。

 

  • 共同生活援助 (グループホーム)

グループホームでは、少人数のグループが共同生活を送りながら、必要な支援を受けることができます。より家庭的な雰囲気の中で、個別のニーズに合わせた支援やケアが提供されます。

 

訓練のためのサービス

  • 自立訓練 (機能訓練)

高齢者や障がい者が日常生活で必要な能力を向上させるための訓練プログラムです。身体機能の向上やリハビリテーションを目的とし、個々の能力やニーズに合わせたトレーニングが提供されます。

 

  • 宿泊型自立訓練

施設に一定期間宿泊しながら、日常生活で必要な能力を向上させるトレーニングを行います。24時間体制での支援や訓練が提供され、生活技能や社会参加能力の向上を目指します。

 

  • 就労継続支援A型 (雇用型)

障がい者が雇用された職場で、仕事を継続して行うための支援が提供されます。職場への移行支援や職務の適正化、必要な支援体制の構築などが行われ、障がい者の職場での定着を支援します。

 

  • 自立訓練 (生活訓練)

日常生活の自立を目指す訓練プログラムであり、生活技能や社会生活のスキルを向上させます。施設や地域での訓練が行われ、生活全般での自立を支援します。

 

  • 就労移行支援

障がい者が就労するための準備段階で、キャリアカウンセリングや職業訓練などの支援が提供されます。職場への適応力を高めるためのトレーニングやスキルアッププログラムが実施されます。

 

  • 就労継続支援B型 (非雇用型)

障がい者が施設内での作業を通じて、生活や社会参加のスキルを維持・向上させる支援が行われます。職業体験や作業療法などを通じて、障がい者の自己実現や社会参加を促進します。

 

相談支援に関するサービス

  • 地域移行支援

障がい者や高齢者が施設や特定の環境から地域社会へ移行する際に、生活や社会参加の支援を行います。移行先の生活環境への適応支援や地域社会とのコミュニケーション構築、必要なサービスの提供などが行われます。

個々のニーズや状況に応じて、適切な移行計画やサポート体制が立てられます。

 

  • サービス利用支援

障がい者やその家族が利用可能な福祉サービスや支援制度について、情報提供や利用方法の説明、手続きのサポートを行います。利用者のニーズや目標に合わせて、最適なサービスの選択や利用計画の立案が支援されます。

利用者の権利や利益を保護し、サービスの利用が円滑に行われるように支援します。

 

  • 地域定着支援

地域社会での生活や社会参加を促進するための支援を提供します。地域コミュニティとの交流や地域資源の活用、地域でのネットワーク構築などが支援されます。

地域に根ざした支援体制の構築や地域の特性に合わせた支援プログラムが展開されます。

 

  • 継続サービス利用支援

利用者が継続して福祉サービスや支援を受けるための支援を提供します。サービスの利用状況やニーズの変化に合わせて、適切なサービスの調整や再計画が行われます。

利用者の生活や支援環境が安定し、継続的な支援が提供されるようにサポートします。

 

  • 自立支援医療

自立支援医療は、障がい者や高齢者が医療機関を通じて自立した生活を送るための支援を提供します。これには、適切な医療診断と治療、リハビリテーションプログラムの提供、生活に適した医療機器や補装具の提供が含まれます。

自立支援医療は、機能の維持や向上、生活の質の向上を目指し、個々の利用者のニーズや健康状態に応じたサービスが提供されます。

 

  • 地域生活支援事業

地域生活支援事業は、地域社会での自立した生活を支援するための様々なサービスを提供します。これには、地域コミュニティとの連携、日常生活の支援、社会参加の促進、生活技能の向上などが含まれます。

地域生活支援事業は、利用者が地域社会で安心して生活できるように、地域資源を活用しながら総合的な支援を提供します。

 

  • 補装具

補装具は、障がい者や高齢者が日常生活をより快適に行うための支援具です。身体機能の補助や維持、身体的な安定や安全を確保するために使用されます。

車椅子、義足、義手、歩行補助具、視覚補助具など、様々な種類の補装具があり、個々のニーズや生活状況に応じて選択されます。

 

福祉サービスの利用手続き

福祉サービスの利用手続きは、相談・申請、障がい支援区分認定、支給決定の流れに従います。まず、地域の障がい福祉窓口や相談支援機関で相談を行い、希望があれば市区町村に申請を提出します。申請後は、市町村の認定調査員が面接を行い、全国共通の質問紙に基づいて認定調査を実施します。

医師の意見書とコンピューター判定により一次審査が行われ、その後市区町村の審査会で二次判定が行われます。これによって、支援区分1~6の認定が行われます。最後に、障がい者に対する差別の禁止と合理的配慮について説明がなされ、法律に基づいた適切なサポートが提供されます。

 

障がい者差別解消法の制定

障がい者差別解消法の制定は、障がいを理由とする差別の解消を推進し、全ての国民が障がいの有無にかかわらず尊厳を持ち、共生する社会の実現を目指しています。法律の目的には、障がい者基本法の理念に基づき、全ての障がい者が基本的人権を享受し、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を持つことが明記されています。

 

合理的配慮

合理的配慮についての説明によれば、「障がい者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失ったり、過度の負担を課さないものをいう」とあります。

この合理的配慮は、個々の障がいに応じて基本的人権が損なわれることなく、必要な変更や調整が行われることを意味します。ただし、均衡を失ったり、過度の負担を課すような変更や調整については制限があります。例えば、建物全体を改造する必要がある場合など、その実施が合理的でない場合は、代替案を検討することが必要です。

 

障がい者差別解消法

障がい者差別解消法の第7条第2項、第8条第2項では、行政機関や事業者に対し、障がい者から社会的障壁の除去が必要である旨の意思がある場合には、その実施に伴う負担が過重でない場合には、障がい者の権利や利益を侵害しない範囲で、合理的な配慮を行うことが求められています。

厚生労働省から出された障がい者雇用促進法に基づく合理的配慮指針では、すべての事業主が対象となり、合理的配慮は個々の事情を考慮しつつ、障がい者と事業主の相互理解の中で提供されるべき性質のものとされています。

具体的な支援策として、視覚障がいのある人には音声で情報提供するなどの方法が挙げられています。また、厚生労働省障がい者雇用対策課からは、合理的配慮指針事例集が提供されており、内閣府ホームページには合理的配慮等具体例データ集が掲載されています。

共生社会の概念を支える障がい観について再考することが重要

障がい観の変化に関する学習では、障がいが欠陥でないことを説明し、障がい観の変遷概要を解説することが目標です。障がいをどのように捉えてきたのか、共生社会の実現に向けた障がい観の変化を理解することがポイントです。

障がい観の変化を学ぶことで、過去から現在までの変遷や、障がい者に対する理解の深まりを把握し、共生社会の概念を支える障がい観について再考することが重要です。

 

障がい者福祉に関わる社会の変化を知る

社会の変化に関する学習目標は、障がい者福祉に関わる社会の変化を知ることです。具体的には、少子高齢化や高度情報化などの社会的な変化が障がい者に及ぼす影響や、Society5.0がもたらす期待について理解することが目標です。

少子高齢化社会の影響や、Society5.0による障がい者への影響を理解することがポイントです。障がい者福祉における社会の変化を学ぶことで、将来の社会を予想し、障がい者の生活改善に向けた対策を考える機会となります。

 

障がいの概念や種類の概要を知ることが目標

障がいの種類に関する学習では、障がいの概念や種類の概要を知ることが目標です。法律的な障がいの種類や区分に従って、教育や支援が行われることがポイントです。身体障がい、視覚障がい、聴覚障がい、内部障がいについて理解し、それぞれの特徴や支援方法を学ぶことが重要です。

社会の変化や障がい者観の変遷を踏まえて、障がい者施策の法的な流れや制度について学びました。障がい者基本法や障がい者総合支援法を中心に、障がい者の権利保障や支援体制の整備に関する法律の成立や改正について概論的な理解を深めました。法律や制度が急激に変わったように見えても、その流れをつかむことで現在の福祉の仕組みを大まかに理解できるようになりましょう。

まとめ

具体的には、障がい者基本法に基づいて各障がい関係の法整備がなされていることや、障がい者総合支援法との関係について学びました。また、法律や制度の変遷を把握することで、障がい者の社会参加や福祉サービスの提供に関する枠組みを理解しました。

全体的な枠組みの理解から個別の具体的な支援方法まで、障がい者の理解を深めるための基礎知識を身につけました。今後も都道府県庁や市区町村役所の資料や関連するウェブサイトを活用して、学習を続けていくことが重要です。

 

参考

障がいの理解:アシスティブテクノロジー・アドバイザー育成研修用テキスト

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