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2025.06.13

親が知らないきょうだい児の本音|「いい子」の裏にあるもの

障がいのある子どものきょうだいとして育つ「きょうだい児」。
一見、健やかに育っているように見えても、彼らは日常の中で多くの感情を抱えています。
「親に迷惑をかけたくない」「私のことは後回しでいい」そんな“いい子”の仮面の裏にある、本当の思いとは。


本記事では、きょうだい児の本音と、家族としてできることについて考えます。

きょうだい児とは?──障がいのある兄弟姉妹とともに生きる子どもたち

「健常児」だからこその見えにくさ

きょうだい児とは、障がいのある兄弟姉妹を持つ子どものことです。
彼らは「健常児」として見られ、つい支援の対象から外れがちです。
ですが、家庭内で兄弟の介助を求められたり、親の関心が兄弟に偏ったりと、見えない負担を感じていることも少なくありません。

子ども時代に限らず、成人後もその影響は続きます。
以下のような背景や現実があります

  • 両親が障がい児のケアに多くの時間とエネルギーを注ぐため、自分のことは「我慢」することが多くなる
  • 家族の雰囲気を察し「いい子でいよう」と頑張ってしまう
  • 「お兄ちゃんなんだから」「妹を守ってあげて」など、年齢以上の責任を期待されやすい
  • 親や社会からあまり関心を向けられないと感じることがある

一見「元気に育っている」ように見えても、内側には複雑な気持ちを抱えていることが少なくありません。

きょうだい児が抱く“言えない気持ち”

「親を困らせたくない」自己抑制の背景

きょうだい児は、親が障がいのある兄弟姉妹の世話に忙しい姿を見て育つため、自分の感情や要望を抑え込む傾向があります。

彼らが抱えがちな気持ちは以下の通りです。

  • 親を困らせたくない、迷惑をかけたくない
  • 自分の悩みは小さいと感じて言えない
  • 「わがまま」と思われることを恐れて話せない
  • 孤独感や不安を感じながらも誰にも伝えられない

このような自己抑制は気づかれにくい心の負担となり、ストレスや寂しさを生み出します。
家族や周囲がきょうだい児の心に寄り添い、日常的に声をかけることが大切です。

きょうだい児が抱える複雑な感情とは?

きょうだい児が感じやすい感情は多岐にわたります。
愛情、誇り、羨望、寂しさ、葛藤、罪悪感…。
とても一言では語れません。

よくある感情の例

  • 【寂しさ】
     「どうして私の話はすぐに終わっちゃうのに、弟の話は長く聞いてもらえるの?」
  • 【嫉妬・怒り】
     「自分の誕生日なのに弟の機嫌ばかり取っていた」
     「本当はもっと家族に注目してもらいたい」
  • 【罪悪感】
     「そう思ってしまう自分は、冷たい人間なのかもしれない」
  • 【誇りや尊敬】
     「でも障がいのある兄が頑張っている姿を見て、私も負けられないと思った」

こうした感情が渦巻くなかで「誰にも本音を話せない」という孤独も伴いやすいのです。

自由の制限がもたらす葛藤とそこから得る強さ

障がいのある兄弟姉妹のケアや制限のために、きょうだい児の自由が制限されることは少なくありません。

具体的には

  • 友達と遊ぶ時間が減る
  • 好きな習い事をやめざるを得ない
  • 家族旅行やイベントに行けないことがある

これらの制約はきょうだい児のストレスや寂しさの大きな要因です。

しかし、こうした経験からもたらされる成長もあります。

  • 思いやりや忍耐力が育まれる
  • 家族のために頑張る強さが生まれる
  • 困難を乗り越える力や人間性の深さを培う

これらは彼らの人生の財産となり、困難の中にも光を見出す力となっています。

家族みんなで歩む支え合いの道

きょうだい児の気持ちを言葉にすることの重要性

きょうだい児は自分の気持ちを話すことが苦手な場合が多いため、家族が日頃から声をかけ、気持ちを言葉にする手助けをすることが非常に大切です。

毎日の何気ない会話の中で「今日はどうだった?」と気軽に問いかける時間を持つこと。
感情に名前をつけて、一緒に考えてみることも効果的です。

例えば、

  • 「悲しい気持ちがあるのかな?」
  • 「ちょっとイライラしてる?」

と気づきの言葉をかけることで、本人も自分の感情を整理しやすくなります。

また、言葉で伝えづらい場合は、日記や絵、音楽など、本人が表現しやすい方法を探してみるのも良いでしょう。
家族が寄り添い受け止める姿勢を示すことで、きょうだい児の心は少しずつ軽くなります。

一人の個人としての尊重を大切に

親はどうしても障がいのある子どもに目がいきがちですが、きょうだい児も一人の尊い個人として大切に扱う必要があります。

彼らが自分らしく生きられるように、やりたいことを応援し、感情の変化に寄り添いながら、過度な期待をかけすぎないバランスが求められます。

  • 好きなこと、得意なことを伸ばす
  • 困った時にはしっかり話を聞く
  • 失敗しても受け止める

こうした日々の積み重ねがきょうだい児の自己肯定感を育て、自立した未来への土台となります。

親にしかできない、大事なかかわり

親の関わり方はきょうだい児にとって心の軸になります。

親として心がけたいこと

  • 「ありがとう」「がんばってるね」をきちんと言葉にする
  • 日常の中で1対1の時間をつくる
  • 子どもが“無理して強がっていないか”気にかける

完全に平等でなくても大丈夫です。
「自分のことも気にかけてくれている」と感じるだけで、子どもは救われることがあります。

家族以外のつながりが心の余裕を作る

きょうだい児は家族だけでなく、社会の理解と支援も必要です。
同じ立場のきょうだい児の集まりや地、域の支援団体に参加することで、孤独感が和らぎ、新しい視点や生きる力を得られます。

  • 「自分だけじゃない」と実感できる安心感
  • 似た経験をする仲間との交流からの励まし
  • 新しい友達や支援者との出会い

こうした社会的つながりはきょうだい児の心の支えになるだけでなく、家族の負担軽減にもつながります。

おわりに:きょうだい児の心に寄り添う社会へ

きょうだい児は家族の大切な一員でありながら、知られざる苦労や葛藤を抱えています。
その声に耳を傾け、温かく見守り続けることが家族の絆を深め、みんなが笑顔で暮らせる未来へとつながります。

家族だけでなく、地域や社会全体で支え合い、すべての人が自分らしく生きられる環境をつくっていきたいものです。

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