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頼むのが苦手・断れない…発達障がいのある人が人間関係で疲れないための言い方練習帳

人間関係の中で
「ちょっと頼んでみる」
「無理なことは断る」
といったやりとりは、日常的に起こることです。
でも、発達障がいのある人にとっては、この“ささいなコミュニケーション”がとても難しく感じられることがあります。
- どう伝えたらいいかわからない
- 相手の気持ちを考えすぎて言い出せない
- 空気を読みすぎて、自分を後回しにしてしまう
この記事では、そんな「頼む」「断る」が苦手な方のために、具体的な言い方例や気持ちの整理の仕方を紹介していきます。
少しずつでも“自分らしいコミュニケーション”ができるヒントになれば嬉しいです。
「頼むのが苦手」なあなたへ

頼みごと=迷惑?と思っていませんか?
発達障がいのある人の中には
「頼んだら迷惑かも」「わがままだと思われるかも」
という思い込みから、お願いすること自体に強いハードルを感じている方がいます。
でも実際は、頼まれた相手は「力になれて嬉しい」と思ってくれることも多いんです。
まずは「頼んでもいいこと」を整理してみよう
頼んでもいいことの例
- わからないことを教えてもらう
- 重いものを運ぶのを手伝ってもらう
- 忙しくて手が足りないときに助けてもらう
- 体調が悪いときに代わってもらう
→自分が「どんなことに困りやすいか」を振り返ると、頼む準備ができます。
頼みごとのフレーズ練習
お願いの言い方例
- 「ちょっと手伝ってもらえるかな?」
- 「○○が苦手で…代わりにやってもらえると助かる」
- 「忙しいところごめんね、○○をお願いしてもいい?」
- 「一緒に考えてくれると嬉しいな」
▶ポイント
・「お願いしてもいい?」と相手の意思を尊重する形にする
・素直な気持ち(困っている・助けてほしい)を伝える
「断れない」あなたへ

NOと言えないのは優しさ?それとも無理しすぎ?
断るのが苦手な方は、相手をがっかりさせたくない・嫌われたくないという気持ちが強い傾向があります。
でも、その結果として自分が疲れきってしまうことも。
「自分を守るために断る」ことは、わがままではなく、正当な自己防衛です。
まずは「断っていいライン」を自分の中に持つ
断っていい例:
- 体調が悪いとき
- 他に優先する予定があるとき
- 苦手なこと・できないことを頼まれたとき
- 気持ちがしんどいとき
→“断る練習”は、自分の境界線(=バウンダリー)を確認することから始まります。
上手な断り方フレーズ練習
断る言い方例
- 「ごめんね、今日は難しいんだ」
- 「ちょっと無理かもしれない…また今度ならできるよ」
- 「やりたい気持ちはあるんだけど、今は体調がよくなくて」
- 「それはちょっと苦手だから、他の人にお願いできる?」
▶ポイント
・理由を簡単に添えると納得されやすい
・感謝の言葉を忘れずに(例:「声かけてくれてありがとう」)
苦手な場面を“分けて考える”とラクになる

頼む・断るにも段階がある
「頼む」「断る」は1つの行動ですが、次のようにステップを分けると練習しやすくなります。
【頼むステップ】
- 自分が何に困っているかを自覚する
- 誰に頼めばよいかを考える
- どう頼むか、言い方を考える
- 実際に伝える
【断るステップ】
- 今の自分の状態を確かめる
- できそうかどうか判断する
- 無理なら、断る理由を考える
- 相手に伝える+別の提案があれば伝える
書き出して整理する方法もおすすめ
- 「困っていること」や「言いたいこと」を紙に書いてみる
- 頭の中で混乱してしまう人にとって、視覚的に整理するのはとても効果的です
日常で“ちょっとだけ言ってみる”習慣をつけよう

最初は身近な人・短い言葉から
最初から完璧に言う必要はありません。
むしろ「えっと…ちょっとお願いがあるんだけど…」と途中まででも言えたら大成功です。
「ありがとう」「ごめんね」「今は無理かも」など、短い言葉を少しずつ使っていくことが、言葉のハードルを下げてくれます。
“言えた”をちゃんと自分でほめよう
人に頼んだり断ったりしたあと、「ちゃんとできた!」という実感が持てると、少しずつ自信になります。
- 「前よりちゃんと伝えられた」
- 「今日は勇気を出して頼めた」
- 「無理なとき、NOって言えた」
→これを自分で認めてあげることが、次のステップへの力になります。
サポートや環境を活かす工夫も大事

メモ・カード・アプリを活用する
言葉で伝えるのが難しい場合、こんな工夫も役立ちます。
- 伝えたい内容を書いたメモやカードを渡す
- 頼みごとや断り文句をスマホのメモ帳に保存しておく
- サポートグッズやアプリ(例:意思表示カード、会話支援アプリ)を使う
理解してくれる人との関係を大切に
安心して話せる人が一人でもいるだけで「言ってみようかな」という気持ちになります。
- まずは、支援者・家族・福祉サービスのスタッフなど
- その人に、今の自分の困りごとを伝えてみるところからスタートしてもOKです
おわりに:自分を大事にできる“言葉”を少しずつ
「頼めない」「断れない」と悩むのは、自分や相手の気持ちを大切にしたいという想いの裏返しでもあります。
でも、人に頼ってもいいし、無理なときはNOと言っていい。
それが“自分を大事にする”ということです。
言葉にするのが難しいときも、少しずつ「自分の伝えたいこと」を言えるようになれば、人との関係もきっとラクになりますよ。
この練習帳が、あなたの“安心できる関係づくり”の一歩になればうれしいです。