2024.04.04

障がい福祉サービス事業所の一部で報酬の大幅な減少のおそれ 事業所からは「事業を継続できなくなる」

障がい福祉サービス事業所の報酬改定に伴い、4月から利用者が受けた時間に応じて支払われる仕組みが導入されます。しかし、この変更により報酬が大幅に減少する可能性が指摘され、事業所の一部からは「事業を継続できなくなる」との声が上がっています。厚生労働省はこの問題に対応するため、検討を行う方針です。

 

障がい福祉サービス事業所の報酬を3年ごとに見直している

厚生労働省は障がい福祉サービス事業所の報酬を3年ごとに見直しており、今回の改定もその一環です。特に生活介護を提供する事業所では、これまでの営業時間に応じた報酬から利用者が受けた時間に基づく報酬への変更が行われます。しかしながら、この変更が事業所の収入に大きな影響を与えることが懸念されています。

 

「このままでは事業の継続が困難になる」

大阪・生野区に位置する精神障がい者向けの生活介護事業所「アトリエ・IK」は、40代から70代の利用者33人を受け入れています。この事業所では、利用者それぞれの障がいの特性に応じて、日々の体調や他者との接触時間などに大きな差異があります。そのため、利用者の中には長時間の滞在が難しい方もおり、利用時間が5時間未満の利用者が半数以上を占めています。

今回の報酬改定により、アトリエ・IKでは報酬が38%も減少する見通しです。この変更により、事業所の運営に大きな影響が及ぶことが懸念されています。精神障がい者支援の会ヒットの藤川治彦事務局長は、「事業所の経営努力や工夫だけでは対応が難しく、このままでは事業の継続が困難になる」と指摘しています。彼はさらに、「短時間の利用でも利用者の生活の支えになっているため、国には柔軟な対応を期待したい」と述べました。

 

報酬の大幅な減少が予想されることを厚生労働省に訴えている

大阪の障がい者団体は、大阪府内で精神障がい者の生活介護を行っている10か所の事業所について調査し、報酬の大幅な減少が予想されることを厚生労働省に訴えています。この問題は、生活介護サービスの安定的な提供と利用者の生活の維持にとって重要な課題となっています。

報酬改定に対する懸念を受けて、厚生労働省は限られた時間しか利用できない人を受け入れる事業所に対して一定の配慮を設ける方針を示し、3月中に対応策を検討することを明らかにしました。

 

利用者への負担増加の懸念

報酬改定の影響を受けて危機感を募らせる事業所の一つが、視覚と聴覚の両方に障がいがある盲ろうの人が通う「手と手とハウス」です。この事業所には19人が通っており、盲ろうの人が情報にアクセスするための手段として、介助者が1人ずつ付き添い、手を触って伝える「触手話」や「指点字」が利用されています。

しかしながら、これらの手法は手先の神経を集中させて情報を読み取る必要があり、長時間のやりとりは利用者に疲労をもたらす可能性があります。報酬改定によって、このような事業所の運営にさらなる課題が生じることが懸念されています。

事業所で過ごす時間の重要性を認識しつつも、やりとりに気を遣うことが疲労を招く利用者の声が上がっています。特に60代の男性は、「さまざまな情報を得ることができるので事業所で過ごす時間は大切ですが、やりとりにとても気を遣うため何時間も続けるのは難しいです」と述べています。

事業所によると、利用者のほぼ全員が5時間ほどの利用時間となっており、報酬改定後は3割ほどの減少が予想されています。この変更によって、事業所の運営に大きな影響が及ぶことが懸念されています。

 

利用者や事業所の実態を考慮した対応を求める

事業所の管理者である町田知枝さんは、「利用時間の長さだけでなく、その中身や短い時間にならざるを得ない事情も踏まえながら、国には検討を進めてもらいたい」と述べ、報酬改定における利用者や事業所の実態を考慮した対応を求めています。

障がい福祉サービスの種類と内容

障がい福祉サービスには、以下の主な内容があります。

 

  • 居宅介護

居宅において、入浴、排せつ、食事などの介護や家事、生活全般にわたる援助が行われます。このサービスを受けるための対象者は、障がい支援区分が区分1以上であり、特定の介助を必要とする状態にあることが条件です。

 

  • 重度訪問介護

重度の障がいを持つ方に対して、居宅での介護や日常生活の支援を行います。また、病院や施設に入院中の障がい者にも支援を提供します。

このサービスを利用できる条件は、障がい支援区分が区分4以上であることや特定の行動関連項目等の合計点数が一定以上であることが挙げられます。

 

  • 同行援護

視覚障がいにより、移動に著しい困難を抱える障がい者等に対して、外出時に同行し、移動に必要な情報提供や援護を行います。

また、外出時に必要なその他の援助も提供されます。対象者は、視覚障がいにより移動が著しく困難であり、同行援護アセスメント調査票による視力障がい、視野障がい、夜盲のいずれかが1点以上であり、かつ、移動障がいの点数が1点以上の者です。

 

  • 行動援護

知的障がいや精神障がいにより行動上著しい困難を抱える障がい者等に対して、行動時に生じ得る危険を回避するための援助や外出時の介護、排せつ、食事などの介護を行います。

また、行動時に必要なその他の援助も提供されます。対象者は、障がい支援区分が区分3以上であり、行動関連項目等の合計点数が10点以上である者です。

 

  • 療養介護

病院に入院している障がい者で、常時の介護を必要とする方々に対して、主に昼間において、機能訓練、療養上の管理、看護、医学的管理に基づく介護、日常生活の世話などを提供します。

医療的なケアが必要な障がい者に対しては、療養介護医療としても提供されます。対象者は、長期の入院に加えて常時の介護が必要な障がい者であり、特定の条件に該当する方々です。

 

  • 生活介護

地域や施設において安定した生活を営むために、常時の介護や支援が必要な障がい者に対して、主に昼間において、入浴、排せつ、食事の介護や家事、生活相談、創作的な活動などの支援を提供します。

対象者は、障がい支援区分が区分3以上であり、あるいは50歳以上の場合は区分2以上であり、生活介護と施設入所支援の組み合わせを希望する方々や、特定の条件に該当する方々です。

 

  • 短期入所(ショートステイ)

介護者の疾病やその他の理由により、一時的に障がい者支援施設や児童福祉施設などへの短期間の入所が必要な障がい者に対して、施設での入浴、排せつ、食事の介護など必要な支援を提供します。

対象者は、福祉型では障がい支援区分が区分1以上の障がい者や、厚生労働大臣が定める区分1以上に該当する障がい児であり、医療型では特定の疾患を有する者や重度の障がい者などです。

 

  • 重度障がい者等包括支援

意思疎通に著しい支障がある障がい者で、四肢の麻痺や寝たきりの状態にある者や、知的障がいや精神障がいにより行動上著しい困難を有する者に対して、居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、生活介護、短期入所、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援、就労定着支援、自立生活援助、共同生活援助などを包括的に提供します。対象者は、障がい支援区分が区分6に該当し、意思疎通に著しい困難がある者です。

 

  • 施設入所支援

障がい者が施設に入所する場合に、夜間において入浴、排せつ、食事などの介護や、生活に関する相談や助言などの日常生活上の支援を提供します。

対象者は、生活介護を受けている障がい者で、障がい支援区分が区分4以上である者、自立訓練や就労移行支援を利用する者、旧法指定施設に入所していた者、または特定の理由により通所が困難な者です。

 

  • 自立訓練(機能訓練)

障がい者が地域生活で身体機能や生活能力を維持・向上させるために、障がい者支援施設や障がい福祉サービス事業所に通って受ける、理学療法や作業療法などのリハビリテーションや生活に関する相談や支援を提供します。

対象者は、退所・退院した者や特別支援学校を卒業した者など、地域生活で支援が必要な障がい者です。

 

  • 自立訓練(生活訓練)

障がい者が地域生活で自立した日常生活を営むために必要な入浴、排せつ、食事などの生活能力を向上させるための訓練や生活に関する相談や支援を提供します。対象者は、退所・退院した者や特別支援学校を卒業した者など、生活能力の維持・向上が必要な障がい者です。

 

  • 宿泊型自立訓練

障がい者が一定期間、居住の場を提供されながら、日常生活能力を向上させるための支援や生活に関する相談などの支援を受けます。

このプログラムは、地域移行に向けて訓練や支援が必要な障がい者に提供されます。具体的には、日中は一般的な就労や障がい福祉サービスを利用している障がい者で、居住後も生活能力の向上のための訓練や支援が必要な者が対象です。

 

  • 就労移行支援

一般の事業所での雇用が可能な障がい者が、生産活動や職場体験などを通じて就労に必要な知識や能力を向上させるための訓練や、求職活動の支援、適性に合った職場の開拓、就職後の職場への定着のための相談などの支援を受けます。対象者は、65歳未満で一般の事業所での雇用が可能であり、そのための支援が必要な障がい者です。

 

  • 就労継続支援A型(雇用型)

通常の事業所での雇用が難しい障がい者が、雇用契約に基づいて継続的に就労するための訓練や支援を受けます。対象者は、一般の企業などでの雇用が難しい障がい者で、65歳未満の者に対して適用されます。

 

  • 就労継続支援B型(非雇用型)

通常の事業所での雇用が難しい障がい者が、生産活動や訓練などを通じて生活能力を向上させるための支援を受けます。対象者は、一般企業での雇用に結びつかない障がい者や、一定年齢に達した者などが含まれます。

 

  • 就労定着支援

障がい者が通常の事業所に新たに雇用された後も、その就労を継続するための支援が提供されます。

企業や障がい福祉サービス事業者、医療機関などと連携し、生じる問題に関する相談や指導、助言などの支援が行われます。対象者は、就労移行支援等を受けて通常の事業所に雇用されてから6か月以上経過した障がい者です。

 

  • 自立生活援助

障がい者が居宅で単身で生活する場合に、定期的な訪問や随時の通報によって、自立した日常生活を営む上での問題を把握し、必要な情報や助言、相談の支援を行います。

対象者は、障がい者支援施設や共同生活援助を行う住居を利用していたり、単身で生活することが難しい状況にある障がい者です。

 

  • 共同生活援助(グループホーム)

共同生活を営むグループホームなどで、夜間を中心に入浴、排泄、食事などの介護や日常生活上の援助が行われます。対象者は、身体障がい者であり、65歳未満の者か、65歳に達する前日までに障がい福祉サービスを利用したことがある者です。

まとめ

福祉施設は社会の支えであり、必要不可欠です。弱者や障がい者にとって、安心できる場所であり、支援やケアを提供し、生活の質を向上させます。

福祉施設は社会の中で欠かせない存在です。そこは障がい者が安心して生活できる場所であり、支援やケアが提供されることで、彼らの生活の質が向上します。その支えがなければ、彼らの生活はますます困難になるでしょう。

 

参考

障がい福祉サービス事業所 一部で大幅報酬減おそれ 国対応検討へ | NHK

障がい福祉サービスについて 厚生労働省

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