2024.02.29

小学校のトイレなぜ洋式化が進まない?:衛生面とバリアフリーの観点から見る学校のトイレ問題

半数以上が和式

4月の小学校入学まであと約1か月です。この時期になると毎年注目されるのが、学校のトイレ問題です。全国の公立小中学校の約32%が現在も和式トイレを残しており、地域によっては半数以上が和式であると報告されています。

 

和式トイレが無い

保護者からは和式トイレの練習をさせる際に、「和式トイレの確保が本当に困ります」「周囲に和式トイレがなくて練習させるのが困難です」といった声が寄せられています。

一方、「洋式は衛生的でないかもしれません」「和式は子供の健康に良いと聞いたことがあります」「改修にはそれなりの費用がかかるでしょう」と、和式を支持する意見もあります。

ただし、普段から洋式トイレに慣れている子供たちにとって、学校で和式トイレを利用することが難しい場合もあります。では、全ての学校を洋式トイレにするべきでしょうか。

専門家や小児科医、前明石市長の泉房穂氏とともにこの問題を考えました。

 

予算と優先順位

学校のトイレを洋式化する取り組みは、自治体にとって大きな挑戦です。その中でも、最も大きなハードルは、改修に必要な莫大な費用です

洋式トイレの設置や既存の和式トイレを洋式に改修するには、高額な予算が必要とされます。特に公立の小中学校では、数多くの施設が存在し、それら全てを洋式に改修することは容易ではありません。

これには、トイレの設備そのものだけでなく、配管や排水などのインフラ整備も含まれます。そのため、費用面の問題が、洋式化を進める上で最も大きな障害となっています。

 

維持管理費や将来の修繕費

洋式化には、設備や工事費だけでなく、維持管理費や将来の修繕費なども含まれます。これらの費用を負担するためには、地方自治体や学校教育委員会が十分な予算を計上する必要があります。しかしながら、予算の限られた状況下で、トイレの洋式化に必要な費用を捻出することは容易ではありません。そのため、計画の実行には慎重な財政計画と効果的な予算配分が求められます

 

施設の老朽化

また、費用だけでなく、洋式化に伴う影響や課題も考慮する必要があります。例えば、改修工事中に授業や学校生活に支障をきたす可能性があります。さらに、施設の老朽化や地域の特性に応じた調査や設計が必要となります。これらの要因を考慮すると、洋式化の実施には時間と労力が必要であり、費用だけでなく様々な面での課題が存在することが分かります。

 

児童や生徒が安心して利用できるように

学校のトイレを改修する際には、「5K」問題が顕在化します。この「5K」とは、「汚い」、「臭い」、「暗い」、「怖い」、「壊れている」を指し、利用者のトイレ体験に大きな影響を与える要素です。特に学校のトイレは、児童や生徒が安心して利用できるようにする必要があります。しかし、これらの問題が解決されない限り、利用者の満足度を高めることは難しいでしょう。

例えば、「汚い」トイレでは衛生面に対する不安が生じ、利用者がトイレを避ける可能性があります。「臭い」トイレでは、不快な臭いが周囲に広がり、利用者のストレスを増大させます。また、「暗い」トイレや「怖い」トイレでは、安全やプライバシーへの懸念が生じ、利用者の心理的な負担が増加します。「壊れている」トイレでは、トイレの機能性が損なわれ、利用者の利便性が著しく低下します。

 

清潔で快適、安全なトイレ環境が必要

これらの問題を解決するためには、トイレの改修が必要です。清潔で快適、安全なトイレ環境を提供することで、利用者の満足度が向上し、健康促進や学習環境の改善に繋がることが期待されます。したがって、学校のトイレ改修には、これらの「5K」問題を解消することが不可欠です

 

感染リスクを高める和式トイレ

感染リスクを考えると、和式便器の菌数が洋式の164倍もあることが明らかになりました。菌を採取して比較した結果、洋式便器周りを1とした場合、和式便器の大腸菌数が圧倒的に多いことが分かりました。この差は驚くべきものであり、和式トイレを残すことが感染リスクを高める可能性があることを示唆しています。

 

学校全体の感染症の拡大を防ぐ

特に学校などの集団生活が行われる場所では、感染症の予防が重要です。和式トイレの菌数が多いことは、病原菌の増殖や感染のリスクを高める要因となります。このため、衛生環境の向上が求められます。清潔で衛生的なトイレ環境を提供することで、児童や生徒の健康を守るだけでなく、学校全体の感染症の拡大を防ぐことが期待されます

 

健康と安全を守り利便性や快適を確保

これらの調査結果から、和式トイレの利用は感染リスクを高める可能性があるという議論が浮上しています。そのため、トイレの改修や洋式トイレへの移行が検討されています。ただし、改修計画を進める際には、費用や利用者のニーズなどを十分に考慮する必要があります。健康と安全を守りつつ、利便性や快適さも確保することが重要です。

 

和式トイレ、排便のしやすさに関するエビデンス不足

和式と洋式のトイレに関する研究は進行中ですが、排便のしやすさに関するエビデンスや統一の見解はまだ出されていません。一部の人々は、和式トイレが足腰を鍛えると主張していますが、科学的な根拠が不十分です。実際には、個々の利用者によって感じ方や体験が異なるため、一概にどちらが良いとは言えません。身体的な条件や環境への適応性、文化的な側面なども考慮する必要があります。

 

個人の経験や好みに基づく主張

和式トイレの利点として、正しい姿勢を保ちやすく、膝関節などの運動量が増えるという主張があります。一方で、洋式トイレは座って行うことでリラックスでき、排便しやすいという意見もあります。ただし、これらの主張は個人の経験や好みに基づくものであり、科学的な証明が必要です。将来的には、より包括的な研究が行われ、排便のしやすさに関する明確な結論が得られることが期待されます。

 

子どもの健康に潜む「小学校1年生の壁」学校トイレと便秘の関係

便秘は、現代社会における一般的な健康問題の一つとなっています。実際、4人に1人が便秘疑いとされるデータもあります。特に子どもたちにとっては、健康な排便習慣を身につけることが重要ですが、学校のトイレ環境がその影響を及ぼすことも少なくありません。

 

ストレスから便秘が悪化したり、便秘を発症するケース

和式トイレを使ったことがない小学生が学校のトイレで嫌な思いをして、そのストレスから便秘が悪化したり、便秘を発症したりするケースがあります。和式便器を見たことがない子どもたちが多く、トイレトレーニングで便秘症を克服した子が「小学校1年生の壁」と呼ばれる時期で再発するケースもあるのです。

 

不安やストレスを引き起こす要因

和式トイレは、洋式と比べて排泄姿勢が異なり、慣れていない子どもたちにとっては不安やストレスを引き起こす要因となることがあります。その結果、便秘の悪化や再発といった問題が生じる可能性があるのです。

このような事態を防ぐためには、学校のトイレ環境を改善し、子どもたちが安心して利用できるような環境を整えることが不可欠です。

また、トイレトレーニングや排便に関する正しい知識を子どもたちに提供し、健康な排便習慣を身につける支援も重要です。

子どもたちの健康を守り、安心して学校生活を送るために、トイレ環境の整備と健康教育の充実が求められています。

避難所のトイレ問題:高齢者や子どもたちの健康に影響

避難所でのトイレ問題が高齢者や子どもたちの健康に与える影響は深刻です。最近のアンケートでは、避難所で不便だったことの1位がトイレであることが明らかになりました。特に和式トイレを使えない高齢者が多く、そのため避難所での生活が困難になるケースが増えています。

 

排便忌避と呼ばれる状態になってしまう

この問題は高齢者だけでなく、子どもたちにも影響を与えています。子どもたちがトイレを避ける傾向にあることから、排便忌避と呼ばれる状態が生じます。この排便忌避が続くと、便秘の悪化や他の健康問題が生じる可能性があります。そのため、避難所のトイレ環境の整備は喫緊の課題となっています。

 

バリアフリートイレの増加

避難所の設備改善の一環として、学校の洋式トイレの増設やバリアフリートイレの増加が提案されています。これにより、高齢者や子どもたちが安心してトイレを利用できる環境が整備されることが期待されます。また、これに加えて、トイレの清潔さや快適さも重視されるべきです。

 

教育予算の不足

さらに、日本の教育予算の不足もこの問題の背景にあります。教育予算が充実すれば、洋式トイレの整備や教育環境の改善が可能となります。他国並みの比率で予算を確保すれば、トイレ環境の整備だけでなく、少人数学級の実現や奨学金の給付など、様々な施策が実現できるでしょう。

まとめ

世論の高まりがトイレの洋式化につながる可能性もあります。地域の健康と安全を守るために、トイレ環境の整備には政府や地方自治体、市民の協力が不可欠です。これらの取り組みが進むことで、避難所での生活環境が改善され、高齢者や子どもたちの健康が守られることを期待しています。

 

参考

学校トイレなぜ“和式”残る? 専門家「大腸菌数は洋式の164倍」泉元市長「国が予算をつければできる。エアコンもそうだった」排便しやすい環境どう作る?(ABEMA TIMES)Yahooニュース

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