2021.01.20

聴覚障がい者を悩ませているコロナ禍



コロナ禍で聴覚障がい者がコミュニケーションを奪われている現状を知る

コロナが流行し、マスクをつけることが一般的となりました。感染予防として欠かせないマスクですが、顔のほとんどが隠れることで聴覚障がい者がコミュニケーションをとりづらくなっています。
コロナが聴覚障がい者を悩ませている現状や、聴覚障がい者に向けてできる配慮ををご紹介します。


マスクがないと聴覚障がい者にどのような影響がある?

「コロナの影響で生活や外出が不便になった」と、70%以上の聴覚障がい者が回答しています。

出典:一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ

マスクをつけると、相手の口の動きや表情が見づらくなります。声を聞き取ることができない聴覚障がい者には、どのような影響があるのでしょうか。


●話しかけられていることに気づけない

聴覚障がい者は多くの情報を「目」から読み取っています。話しかけられるとき、相手の表情や口が動くことで、話しかけられていることに気づきます。 マスクがあると「目」からの情報がへってしまうので、話しかけられていることに気づけなかったり、複数の人のうち誰が話しているかわからなくなったりすることがあります。


●口話を使うことができない

口のかたちや表情だけでコミュニケーションをとることを「口話」といいます。とくに聴覚障がいをもつお子さんは口話をつかうことが多いです。 マスクで口元が隠れることで、口話が使えなくなり、得意なコミュニケーションの手段を失ってしまった方もいます。

またコロナ禍でウェブ会議も流行しましたが、映像だと口の動きが見づらく、聴覚障がい者には何を伝えたいのが読み取れません。 さらに会議がすすんでいるところ、「何度も聞き直すことはしづらい」といって、内容がわからないままウェブ会議を終えてしまうといいます。


●手の動きだけでは意味が読み取れない

聴覚障がい者は「手話」とイメージされる方がほとんどかもしれませんが、手の動きだけではコミュニケーションがとれません。

まず手話には、同じ手の動きでも意味がちがうことがあります。たとえば「あ」と「5」はどちらも手の動きが同じなので、あとから続く手話が「じ」であると、「あじ」とも「5じ」とも読み取れます。まったく意味がちがって伝わってしまいますね。

ひとつの動きで複数の意味をもつ手話もあります。「冬」「寒い」「怖い」はすべて同じ手の動きです。

また手話には「てをには」がなく、単語の連続になっています。簡単なことなら伝えられますが、長い文章になると、単語だけで意味を読み取ることがむずかしくなります。

聴覚障がい者は、わからない部分を口の動きや表情、体の動き、手の動き、すべてを見て補足して、何を伝えたいのかを感じ取っています。 手話通訳の人や、テレビに出ている人がマスクをつけないのは、聴覚障がい者のためでもあります。



コロナ禍で聴覚障がい者が困っているところは?

・お店などで接客を受けるとき

・学校や塾などで授業を受けるとき

・聴覚障がい者が一緒に働いている場

・複数の人と話しているとき

コンビニエンスストアなどお店では、「ポイントカード」や「レシート」「袋」「温めますか」など、店員とやりとりすることが多い場所です。 学校や塾でも何を話しているのか読み取れないと学習ができません。

しかし感染予防は重要なことであり、ほとんどの人がマスクをしているため、「マスクをとってほしいと伝えられない」とたくさんの聴覚障がい者が悩んでいます。



聴覚障がい者に向けて私たちができること

コロナが流行しているなかで、「マスクを外してほしい」といわれて、マスクを外すことはできるでしょうか。聴覚障がい者の事情を理解していないと、マスクを外すことはむずかしいですね。 マスクを外せないコロナ環境のなかで、聴覚障がい者に向けてできる配慮をまとめました。

・アイコンタクトをとる

・笑顔を見せる

・言葉をはっきりと伝える

・ジェスチャーをする

・筆談を大きな文字で書く

・音声を文章化するアプリを導入する

アイコンタクトや笑顔を見せることで、聴覚障がい者は安心することができます。マスクをしていても、笑顔は目の大きさや頬の盛り上がりでわかります。 表情がなく、無言の相手よりも、笑顔でアイコンタクトをとってくれる人のほうが接しやすいですよね。 さらにジェスチャーをくわえると、聴覚障がい者が相手の伝えたいことを感じ取りやすくなります。

筆談をするときは、大きな文字で書けば、ソーシャルディスタンスを守って、コミュニケーションをとることができます。

また音声を読み取って文章にしてくれるアプリも提供されています。講義や会議で役立ったという声が挙がっているので、アプリの導入を検討してみましょう。



まとめ

コロナが流行し、たくさんの人がマスクをつけたことで、聴覚障がい者が困っています。 手話だけではコミュニケーションをとることができず、顔や表情が見えないと誰が話しているのか、何を伝えたいのかがわかりません。 お店では思うとおりに買い物ができず、大事な会議や講義を聞くことができません。聴覚障がい者の約7割の人が「生活や外出が不便になった」と回答しています。

しかしマスクはコロナの感染予防に欠かせず、「外してほしい」といわれて簡単に外せるものではありません。 そこで私たちにできることは、表情以外の方法で、聴覚障がい者に伝わりやすくすることです。笑顔やアイコンタクト、ジェスチャーをしたり、アプリの導入をしたりして、聴覚障がい者がコミュニケーションをとりやすくしましょう。



▼参考

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