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お金の使いすぎを防ぐには?知的障がいがある人のための金銭管理術

この記事では、知的障がいのある方が、無理なく安心してお金を扱えるようになるための方法や、支援ツールをご紹介します。
はじめに:「お金をうまく使う」って、どういうこと?

お金は日々の生活に欠かせない大切な道具です。
でも、知的障がいのある方にとっては難しいこともあります。
たとえば…
- ついお金を使いすぎてしまう
- 財布の中にいくら入っているかわからなくなる
- 毎月の支出を記録するのが難しい
こうした困りごとに対して、工夫やサポートがあれば「自分らしくお金を管理する」ことができます。
【基礎知識】知的障がいとお金管理の関係

お金の管理が難しくなる理由とは?
知的障がいがある方にとってお金の管理が難しくなる主な理由には、次のような特徴があります。
- 数字や計算が苦手
- 抽象的な概念(「節約」や「将来のために貯める」など)が理解しづらい
- 記憶力や注意力にムラがある
- 衝動的にお金を使ってしまいやすい
これらは「本人のせい」ではありません。
環境や支援によって、お金の管理スキルは少しずつ身につけることができます。
一人ひとりに合ったサポートが大切
お金の管理といっても、全てを自分で完璧に行う必要はありません。
自分が「できること」「苦手なこと」を整理し、必要なところだけ支援を受ければ良いのです。
【ステップ1】お金の「見える化」で使いすぎを防ぐ

まずは「現金の管理」からはじめよう
お金の出入りを見えるようにすると、使いすぎの防止につながります。
特に現金での支払いは視覚的に管理しやすいのでおすすめです。
- 財布には1日や1週間ごとの予算だけを入れる
- 「使ってよいお金」と「使わないお金」を分けて封筒に入れる
- 残高がわかるようにメモを貼る
色・形・イラストでわかりやすく
- コインケースを色分けして金額を分かりやすく
- お金の使い道を書いたイラスト付きメモを使う
- 支出管理シートにスタンプやシールで記録する
楽しく・視覚的に管理できる仕組みをつくることが続けるコツです。
【ステップ2】支出の記録を習慣にしよう

「何にいくら使ったか」を記録する
使ったお金の記録をすることで、自分の「お金の使い方」を客観的に知ることができます。
- ノートに日付・使った金額・使った目的を書く
- スマホやタブレットの簡単な家計簿アプリを使う
- 支援者と一緒に1週間分を振り返る習慣を作る
ゲーム感覚で続けやすく
- 1週間記録できたらシールを貼る
- 目標を達成したらちょっとしたごほうび
- 楽しみながら「習慣」にしていく工夫が効果的です
【ステップ3】無理のない「予算」を立ててみる

収入と支出を分けて考える
予算管理はお金の使いすぎを防ぐ大事なスキルです。
- 月に入ってくるお金(例:工賃、年金)をリストアップ
- 必ずかかるお金(例:食費、通院費)を先に予算化
- 余ったお金の中で「自由に使えるお金」を設定する
「お金を分けて考える」ことを、視覚的・具体的に体験することが重要です。
封筒・ファイルで管理する方法
- 「食費用」「おこづかい用」「貯金用」などに分けて封筒を用意
- ファイルにラベルや絵をつけて分かりやすく
- 定期的に内容を見直す時間をつくる
【ステップ4】「衝動買い」を防ぐ工夫

衝動買いが起きやすい状況とは?
- お店で商品を見ると欲しくなる
- 気分が落ち込んでいる時につい買ってしまう
- お金を持っていると全部使ってしまう
衝動買いを防ぐには「買わない」ことを前提にした環境づくりが大切です。
具体的な対策例
- 必要な時以外は財布を持ち歩かない
- お店に行く前に「買うものリスト」をつくる
- 通販サイトは「お気に入り登録だけ」で1日考える
気持ちのコントロールが難しい方には「一緒に考える人」がいると安心です。
【ステップ5】「貯金する楽しさ」を知る

目標をもって貯金する
「なんのために貯金するのか」が明確になると、やる気につながります。
- 楽しみ(旅行・ゲーム・イベント)を目標にする
- 使いたい金額と貯金する期間を決める
- ビジュアルで見える「貯金表」を作る
貯金箱や専用口座の活用
- 中身が見える透明な貯金箱で達成感を
- 支援者と一緒に使える銀行口座での管理も有効
- 定期的に「どれくらい貯まったか」を確認する
【サポートの工夫】まわりの人ができること

家族や支援者が意識したいこと
- 一人ひとりの理解度や特性に合わせた関わりを
- お金を使ったあとに「一緒に振り返る」時間をつくる
- ミスしても責めずに「どうすればよかったか」を一緒に考える
「失敗から学べる」安心感が、お金の管理スキルを育てます。
専門機関・制度の利用も検討を
- 日中活動の場(就労継続支援B型など)で金銭管理支援を受ける
- 成年後見制度を活用して安全にお金を管理してもらう
- 地域の相談支援センターや福祉サービスに相談する
支援者だけで抱えず「制度や専門職」に頼ることも大切です。
【おすすめツール】お金管理に役立つアイテム
アナログでわかりやすい管理ツール
- イラスト入り家計簿ノート
- 封筒分け用の収納ファイル
- 曜日ごとに予算を分けられる財布
デジタルで便利なツール
- シンプルな家計簿アプリ(シンプル家計簿 MoneyNoteなど)
- スマホで管理できる予算シート(支援者と共有も可能)
- 視覚化に強いタブレットツール(ピクトグラムなど)
まとめ:「できた体験」が未来を変える
お金の管理は決して簡単なことではありません。
でも「ちょっとした工夫」や「支えてくれる人」の存在があれば、誰でも少しずつできるようになります。
失敗してもいい。うまくいかない日があってもいい。
大切なのは「自分のお金を、自分で考えて使う」体験を重ねることです。
そして、できたことを「すごいね」と認めてもらえる環境が、次の一歩を後押ししてくれます。
知的障がいがある方が、自分らしく安心して生活していけるように。
お金とのつきあい方を、みんなで考えていきましょう。