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Newsみんなの障がいニュース
みんなの障がいニュースは、最新の障がいに関する話題や時事ニュースを、コラム形式でわかりやすくお届けします。
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「通級に入れない」発達障がい児の通級問題 教育現場の教員不足が深刻化
NHKに寄せられた声によると、「通級に入れない」という苦情が相次いでいます。この「通級指導」は、発達障がいなどを抱える子どもたちが通常の教室に在籍しながら利用できるサービスで、週に数時間程度の特別な指導を受けることができます。 しかし、中には通級に入れず、2年以上も不登校が続いている子どもたちもいます。この問題について、NHKは学校で何が起きているのかを取材しました。(首都圏局/ディレクター 實絢子・岩井信行) 予期せぬ出来事が起きるとパニックに 都内に住む、小学5年生のケンタさん(仮名)は、医師から発達障がいの一つである「自閉スペクトラム症」の傾向があると告げられています。彼は抜き打ちテストなど、予期せぬ出来事が起きるとパニックになってしまいます。 ディレクターが尋ねると、ケンタさんは「予定表とかはあるけど、その時に何があるかわからないから」と答えました。また、「できるかどうか、怖くなる」とも述べました。彼の母親によれば、先生の言葉を100%受け止めてしまい、「間違えちゃだめだからね」という言葉を自分が言われていると思い込んでしまうようです。 通級に入ることができなかった 2年生の時から不登校が続いているケンタさん。彼の母親は、ケンタさんがパニックになった時に気持ちを切り替える方法を学べば、再び学校に通えるかもしれないと考え、通級に申し込みました。しかし、学校からは「希望者全員は受け入れられない」という回答が返ってきたそうです。その結果、ケンタさんは通級に入ることができませんでした。 対人関係を学ぶには学校に行くことが必要 母親は、「ケンタさんが同級生の友達と一緒に遊べなくなったことが一番つらい」と述べています。彼女はまた、知識を詰め込むだけであれば家庭でもできると考えますが、対人関係を学ぶにはやはり学校に行くことが必要だと語ります。 ディレクターが尋ねると、ケンタさんは「みんなと一緒にお話したい。一緒に鬼ごっことか、そういうことをしたい」と答えました。 「通級に入れない」という声が相次いで寄せられる 「通級に入れない」という声は、ケンタさんのケース以外にも、相次いで寄せられています。 ある保護者は、「親が通級を希望しても、希望者が何名もいるため、一年以上待つ状態が普通のようです。その間に不登校になった子も何人もいます(我が家もそうです)。そしてやっと入級となっても、受けられるのは週に1時間のみでした。」と述べています。 別の保護者は、「発達の凸凹が判明した小学生の子どもがいます。二次障がいで不登校になっており、学校にも相談していますが、『通級はもっと困っている子を優先したい』とのことで、利用が難しそうです。」と訴えています。 さらに別の保護者は、「通っている学校には通級指導教室はなく、通級指導教室のある学校までの送迎を親がやらなければ指導は受けられない、という現実を知りました。私は仕事をしていて送迎をするのは難しく、諦めたまま現在に至ります。」と述べています。 教員の不足 希望しても入れない通級。その背景には、教員の不足があります。通級指導にあたるのはその学校の教員で、特別な資格は必要ありません。 都内の小学校教諭、吉川美穂さんは、教員歴14年で、4年前から通級を担当しています。彼女は、ADHDと診断された児童を指導する日々を送っています。ゲームや運動を通して、集中力や最後までやりきる力を養うことに取り組んでいます。 通級では1人1人の特性に合わせた指導が求められます。東京都では、教員1人当たり受け持つ児童数は12人という基準を設けています。しかし、吉川さんは一時期、基準を超える15人を受け持っていました。その原因は、通級を希望する児童の急増でした。当初は20人ほどと見込まれ、2人の教員が配置されましたが、実際の希望者は31人に達しました。 子ども1人1人の特性に合った指導が難しくなってしまう 江東区立豊洲北小学校の吉川美穂教諭は、「担当する子どもたち1人1人に、現在かかっている医療機関や、服薬状況などを聞き取ったりしています。その資料作りも時間がかかります。正直言うと12人でも結構いっぱいで、それ以上になると、子ども1人1人の特性に合った指導が難しくなってしまうかなと思います」と語ります。 学校は区の教育委員会に、新たな教員を配置してもらえないかと交渉しましたが、江東区立豊洲北小学校の統括校長である喜多好一さんは、「人員を配置してくださいと要望を出したのですが、通常学級でも教員が足りない状況なので配置は難しいとのことでした。結局、学校で探してくださいというような現状がずっと続いていました」と述べています。 誰でも指導を担当できるわけではない 学校は半年かけて、早期退職した元教員を探し出し、通級の担当を補充することができました。しかし、発達障がいの児童の急増に追いつかない教員の確保は、教育現場にとって深刻な課題です。 特別支援教室(通級)では、教員免許があっても、誰でも指導を担当できるわけではありません。「充実はもちろん大事ですが、教育界の中での人材不足が、すごく大きな足かせになっているのかなという実感を持っています」と、喜多統括校長は述べています。 発達障がいの認知や理解が広まったことが通級利用者数の増加に繋がった NHKが東京都内の全区市町村に実施したアンケートによれば、「教職員の人員不足など、学校側の対応を理由に、通級に待機が生じている」と答えた自治体は7つありました。 特別支援教育が専門の明官茂さんによれば、ここ数年で発達障がいの認知や理解が広まったことが通級利用者数の増加に繋がっています。この10年でおよそ3倍に増加し、18万人あまりに上ります。 今後さらに増えると予想 明星大学教育学部の明官茂教授は、「発達障がいなどの子どもに適切な指導をすると、学習や生活の困難が改善することが理解されるようになってきました。当事者や保護者、学校が、対応の必要性を認識しはじめたことで、通級を利用する子どもが増えています。通級の利用者は、今後、さらに増えると予想しています。特別支援教育を受けている子どもの割合は、諸外国に比べて、日本はまだとても少ないからです。通級を必要とする子どもが受けられる体制を整えることが必要です。」と述べました。また、彼は支援の入り口にたどり着けていない子どもたちが多くいることにも言及しました。 学習方法を身につけてもらいたいと通級に入ることを希望 都内に住む小学5年生のミカさん(仮名)については、発達障がいの一つである「学習障がい」の傾向があるといいます。1年生の時、漢字の読み書きが苦手であることに気づいたといいます。 算数など他の教科は問題なくこなせるミカさん。しかし、何度練習を繰り返しても、覚えられない漢字があるといいます。音読や漢字テストなどがあると、クラスでからかわれることも。 ミカさんはこう語ります。「例えば国語と書いてある時に、国語の「語」が読めないと、「国」で止まっちゃって読めなくなっちゃう。『読むのが遅い』とか、『ちげーだろ』って言われたことはあった」と。 ミカさんの母親は、ミカさんにあった学習方法を身につけてもらいたいと通級に入ることを希望しました。「ルビを教科書に振ったら楽になるよとか。どこを読んでいるのか分からなくなったらこういう風に線引くといいよとか、そういうサポートがあると助かるなと」と述べています。 検査を受けるのが条件 しかし、思わぬ壁が立ちはだかります。東京都では、通級に入るために、「発達検査」と呼ばれる検査を受けるのが条件になっています。検査の予約をとろうと区に問い合わせると、ほとんどが埋まっている状況。検査を受けるまで、1年以上かかりました。 ミカさんは検査を待つ間、不登校になりました。大好きなバレーボール部の活動も、参加できずにいます。「読むのが遅い」とか、そういうことがトラウマになって行けなくなったのかもしれない。学校に行けるように6年生になるまでにしたいとミカさんは語ります。 病院の予約が取れない 保護者からの声は、「発達検査は、病院の予約がまず取れない。取れても検査の予約ははるか先。5月に予約したら検査は10月、結果は11月ころになります。新規受け付けすらしていないクリニックも多いので、初診でとなると、いったいいつ検査できるんでしょう…」というものや、「2年生になる時に転勤で移住しました。それまで他県での通級を利用していたことや、診断名を転校先にお伝えしました。しかし、その自治体で検査をしなければ利用ができないルールで、検査まで半年待ち、利用開始は1年間待たされました」といった声が寄せられています。 マンパワー的にたくさんの患者さんを診ることができない なぜ、こうした事態が起きているのか。通級に入るための検査は、自治体や民間の医療機関などで行われています。 記憶力や理解力を測り、検査後の手続きまで含めると、子ども1人につき約5時間かかります。この小児科で実施できる検査数は、最大で月に10件ほどです。現在、検査は5か月待ちだといいます。 カラムンの森こどもクリニック院長である内田創さんは、「なかなかマンパワー的にたくさんの患者さんを診ることができません。需要と供給が全く合っていない状況かなと思います。なんとか検査をしなきゃいけないという思いもありますが、限界といいますか、なかなかやりきれません」と述べました。 専門的な指導を行う教員の養成 支援を拡充していく上で、もうひとつの課題となっているのが、専門的な指導を行う教員の養成です。埼玉県戸田市では、教員に専門的なスキルを身につけてもらう取り組みを始めています。 おととし、教員になった中野健志さんは、初めて担任を任されたのが、発達障がいなどの生徒14人がいるクラスでした。「子どもたちに対して何をすればいいのか、本当に何もわからない状態でした。どうすればいいのか、わからないこともわからない」と中野教諭は振り返ります。 この学校には、そんな中野さんをサポートする民間の専門家がいます。アメリカで心理学などを学び、発達障がいの子どもの支援に長く携わってきた宇都綾子さんです。 問題が起きないよう環境を変える 重視するのは、問題行動をする生徒を叱るのではなく、問題が起きないよう環境を変えることです。たとえば、かつては周りの注目を集めるため、大きな音をたててドアの開け閉めを繰り返す生徒がいました。 そこで、LITALICOパートナーズの精神保健福祉士である宇都綾子さんは、先生方と共にDIYを行いました。スポンジやシリコンを使って、音が出ないようにドアを加工すると問題行動を起こすことが無くなりました。 宇都綾子さんはこう語ります。「いくら締めても音が鳴らないので、注目をもらえない状態になったら、児童の注目欲求の行動がどんどん減少していきました。子どもたちが怒る、イライラする、爆発するという行動ではない行動に、うまく導いてあげるのが重要かなと思っております」。 心理学や行動分析に基づく専門的なスキル 担任の中野教諭は、このような心理学や行動分析に基づく専門的なスキルを宇都さんから学んでいます。この日は、独り言を言い続ける生徒について、相談しました。 中野教諭はこう述べます。「先生が話しているときに、独り言を話して自分の世界に入り込んじゃうのを、何とかしたいんですけれど」。 すると、宇都さんは提案します。「本人に、1人で話しているということを認識してほしいので、注意というよりは、「呼んだ?」という感じで、話していることを認識できるよう促してみてください」。 学校は専門家を招いて教員の成長を促す試み 発達障がいのある子どもの学びを支援するため、学校は専門家を招いて教員の成長を促す試みを行っています。戸田市立戸田中学校の特別支援学級主任である中村直子さんは、「一般の学級と同じような言葉がけでは、なかなかうまくいかないところがあるので、そういうところで少しずつずれが生じていました。専門家にその時のその子に対して、適切な対応がとれるようになってきたかなと思います」と述べています。 まとめ 発達障がいを抱える子どもたちの通級指導に関する様々な問題が浮き彫りになりつつあります。教員の不足や検査待ちの長さなど、課題は多岐にわたりますが、専門家との協力や個別指導の充実が必要不可欠です。彼らの学びと成長を支えるため、教育現場と社会全体が連携して取り組むことが重要です。 参考 発達障がいの子ども「通級に入れない」相次ぐ 検査に1年待ちも 教員不足も深刻 | NHK -
障がい者のリアルに東大生が迫る 10年の挑戦と成長:すべての人が抱える生きづらさに
10年前、2013年に東京大学で始まった「障がい者のリアルに迫る東大ゼミ」が、10年の歳月を経て、記念のイベントを開催することになりました。このゼミでは、身体障がいや知的障がいなど、様々な障がいを持つ人々との対話を通じて、障がいの当事者としてのリアルな体験を学生たちは重ねてきました。 その過程で、難病や依存症などの患者とも向き合い、共に学び合ってきました。この記念のイベントでは、ゼミに参加した学生たちは、これまでの半年間の体験や学びを振り返りながら、障がいの当事者と向き合うことで自分自身を見つめ直す機会を得ることになりました。 「障がい者のリアル×東大生のリアル」と題したイベント 2023年12月、東京大学で開催された「障がい者のリアル×東大生のリアル」と題したイベントでは、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者がゲストとして招かれました。ALSは全身の筋肉が次第に動かなくなる難病であり、多くの患者は2年から5年で自発呼吸ができなくなるとされています。 「周囲に“死なせてほしい”と言ってしまった」 イベントでは、参加者からこんな質問が投げかけられました。「周囲の友人から“死んだほうが楽、死にたい”という相談を受けることが少なくありません。そのような思いを抱いている人に対してどのような応答があり得るのでしょうか」。これに対し、ALS患者の岡部さんは代読で応えました。 「私はこの8月に体調を大きく崩してあまりにもつらくて、周囲に“死なせてほしい”と言ってしまいました。私は死に直面したときにそばにいてくれるだけでどんなに救われるかと思いました。」 なぜ生きづらさに向き合うのか 2013年に始まった学生が運営する自主ゼミ、「障がい者のリアルに迫る東大ゼミ」は、東京大学生がなぜ生きづらさに向き合うのかを問いかけます。 2年の佐藤万由子さんは、高校までの経験から、周囲で不登校や貧困などの生きづらさを目にしてきました。彼女は、誰もが抱える生きづらさに光を当て、語られていない声に耳を傾けることの重要性を感じています。 1年の榎本春音さんは、出生時の性別と性自認が異なるトランスジェンダー男性です。彼は自らも生きづらさを感じており、自分の中にある障がいに対する偏見や不安を抱えてきました。榎本さんは、障がいに対する意識を再認識し、再構築する必要性を感じています。 思いや質問を投げかける 10年目の記念イベントでは、一般にもゼミを公開しようという試みが行われ、これまで講師役を務めてきたALS患者の岡部宏生さんと佐藤裕美さんに依頼が行われました。ALSは2年から5年で自発呼吸ができなくなるとされており、生きるか、亡くなるかの選択を迫られます。 学生たちは、岡部さんと佐藤さんに向けて思いや質問を投げかけました。「お二人とどう出会うかということを考えたときに、生きていてその先の話というか、お二人の現実というか、どのような現実・世界を生きているのか伺いたいと思って。」 避けて通れない問題があった 岡部さんは文字盤を使い、目の動きで会話します。彼はこう語りました。「私と裕美さんは死について話すことがとても多いです。死ぬことは誰にとっても前提だけど、それを身近に感じているのはかなり不自然だよね。」 ALS患者の2人にとって、避けて通れない問題がありました。2020年、京都市のALS患者の女性に対する嘱託殺人の疑いで、医師が逮捕された事件が発生しました。 この事件は、"動かない体で生きる意味がない"という女性の訴えに同調し、「安楽死を認めるべき」という意見がネット上にも見られました。岡部さんはこの事件を振り返り、以下のように語りました。 「あんな姿なら死なせてあげた方がいいという典型でもあるけどね、ほっといてくれとも思うし、そんな発信ではだめだな、もっと社会に伝えたいと思うことと両方あるよ。」 「めちゃくちゃ怖いこと」 ゼミ生の佐藤さんは、かつて家族が意思疎通できない状態になった時の葛藤をぶつけました。「自分自身も脳梗塞のおじいちゃん、おばあちゃんがずっと病院にいて毎日通うっていう生活をしていて。悩んで、すごくいろんなことを考えさせられました。」 これに対し、ALS患者の佐藤さんは次のように述べました。「安楽死とか尊厳死とかが、何かあるとすぐ語られてしまう状況が耐えきれなくて。なるべく見ないように、聴かないように触れないようにしてきて。でもこれじゃだめだ、逆にどんどん向き合って考えなくちゃ行けないと思って。でもそれはそれは自分にとってめちゃくちゃ怖いことなので。」 「生死を二択で捉えられることに違和感を感じた」 榎本さんは、自らも性別のことで悩んだ経験があります。そんな彼女は、ALSと一緒に生きる岡部さんと佐藤さんの話を聞きたいと述べました。 10周年の記念イベントには、学内外から約130人が参加しました。東大生たちは、岡部さんと佐藤さんに向けて、著書やブログで触れられた「生死を二択で捉えられることに違和感を感じた」というお話について詳しく聞きたいと述べました。 岡部さんは次のように答えました。「『“あした生きますか?それとも死にますか?”という質問をみなさんが受けたときにどう思いますか。わたしは馬鹿なこと言わないでよって思っちゃう。生きるつもりでいますがと思っちゃう。けれど、それがいつか言えない時が来るのかなあという病気ではあります。」 「生物はもともと生きることを前提として存在している」 そして、岡部さんはリアルゼミでの経験を共有しました。「ある時のリアルゼミでのことである。生死についての話が出た時のことであったが、生きることと死ぬことが、まるでてんびんが釣り合っているかのような話し方がされているように思えて、私は強烈な違和感を感じた。生物はもともと生きることを前提として存在している。 もともとてんびんは生に大きく傾いている。そのてんびんをひっくり返して死を選ぶことがどんなに不自然かを考えるべきだと私は思う。私が発信したいことは、生存の上に立ってこそ“どうやって生きるか”が存在していること。どうやって生きるかは無限に選択肢があるということ。生きていけないような環境を作り出しているのは私たち自身であると言うこと。どうか私を殺さないで。」 受け止める側が考えること 佐藤さんは、このゼミで学生たちとの対話についての思いを述べました。彼女はこう語ります。「私自身『私はこう思う』っていうこと、そういうことを発信することが何の意味があるんだろう。それは意味をなさないことだから、言うのをやめてしまおうとか、真剣に聴いてくれている人がいるのだろうかとか思っていました。」 しかし、以前リアルゼミに参加した際に、学生たちが真剣に彼女の言葉を受け止め、質問や対話をしてくれたことで、彼女は大きな衝撃を受けました。「『私が』ということにどれだけ意味があるのかということは私が考えることではなくて受け止める側が考えればいいことなんだと気づかせていただいた。」 人との関わり方を深く考える 学生たちは、当事者たちが語った思いについて話し合いました。彼らは、生きると死ぬというテーマについて話を聞くことや、そのテーマについて話すことが、普通のことではないと感じました。 佐藤万由子さんは、「わたしたちに力になりたいと思ってくれているのかもしれないし、感じ取って欲しい、すごく優しい気持ちでしゃべってくれているんだろうな」と述べました。 また、榎本春音さんは、自分自身が選択を迫られていることについて言及し、「生きるかどうかの選択も、選ぶことの怖さや割り切れなさはお二人もずっと抱えてらっしゃったことだから、それを伝えてくれた」と述べました。 最後に、学生たちは、なんにもない人の話も同様に大切に聞くべきであり、人との関わり方を深く考えるべきだということに気づきました。 非常に愛情深いと感じられる 2月、ゼミ生たちは再び岡部さんと佐藤さんを訪ねました。学生の佐藤万由子さんは、佐藤裕美さんに向かって語りかけました。 佐藤万由子さんは、佐藤裕美さんが自分が語ることに抵抗を感じていることについて言及しました。しかし、それでも彼女が今回のゼミに参加してくれて、何かを感じてもらえることを願って話してくれたことは、非常に愛情深いと感じられると述べました。「返したいというか、いただいたものは返したい。」 それに対し、佐藤裕美さんは次のように返答しました。「受け止める人が確かにいて、なんて貴重な今の瞬間なんだろうと思っていて、それがたまっていくことが多分、生きていきたいなみたいなことにつながっている。」 「一緒に生きようね」 榎本春音さんは、「みんな違うっていうこと。みんな違う経験を持っているということ。それはなんか自分はすごくわくわくするんですよね。こんなに違うのにみんな一緒に生きてんじゃんって思うんですよね。悩むっていうことがそんなに悪いことじゃないかもしれないってすごく考えるようになって、悩むっていうことが生きることだってすごく思って。もやもやしながら生きていくっていうこと。それがいいなって思っています。」 一方、岡部宏生さんは、「“生きる”か“死ぬ”かはたった2通り。でもどうやって生きるかは70億通り。しっかり生きようね。一緒に生きようね。」と述べました。 共生の重要性や自己実現の大切さ 彼らが自主ゼミで学んだことが、自らの人生や生き方に大きな影響を与えたことが窺えます。 最初は「東大生」と「障がい者」という枠組みの中で対話していた学生たちが、ゼミを通じてその枠組みから解き放たれ、肩書きや属性にとらわれることなく自由な発想や行動ができるようになったということは、このゼミが与える価値の大きさを示しています。 多様な人々との対話を通じて、自分自身や他者、そして社会に対する理解が深まり、共生の重要性や自己実現の大切さを実感した学生たちは、これからの未来をどう作っていくのかという問いに向き合っている様子が伝わってきます。彼らの成長と展望に期待が寄せられると感じられます。 まとめ 自主ゼミナール「障がい者のリアルに迫る東大ゼミ」が10年の歳月を経て、その記念のイベントを開催しました。このゼミは、学生たちが枠組みにとらわれず、多様な人々との対話を通じて成長し、共生の重要性や自己実現の大切さを実感する場となっています。10年目の今、彼らの挑戦と成長、そして未来への展望が明るく照らされています。 参考 東大生が障がい者のリアルに迫るゼミ すべての人が抱える生きづらさに | NHK -
増えるタッチパネル、視覚障がい者には何も伝わらず…デジタル化の進展と視覚障がい者への課題
タッチパネルの普及により、セルフレジや飲食店での注文が増えていますが、目の見えない人にとっては課題が生じています。凹凸のないパネルではどこを押せばいいのか分からず、利用が難しい状況です。このデジタル化の推進は人件費削減や人手不足解消には役立つ一方で、視覚障がい者の暮らしに新たな壁を生んでいることが指摘されています。 かつては自分でできていたことが、今ではできなくなる 「店員や駅員を呼べば良いと言われればそうだけど…」。この言葉には、便利さと自立の間で揺れ動く心情がにじみ出ています。東京都荒川区視力障がい者福祉協会の長島清会長(62)は、かつては自分でできていたことが、今ではできなくなり、「自立を阻まれている」と感じています。 タッチパネルの弊害 荒川区町屋の職場近くのスーパーでは、支払い方法をタッチパネルで選ばなければなりません。全盲の長島さんは店員に手助けをしてもらっています。カードの暗証番号を知られたくないため、スマートフォンのバーコード決済を利用していますが、混雑時は店員に手間をかけることを避け、買い物に行かないこともあります。 タッチパネルで暗証番号を入力することに困っている 銀行のATMでは、一部の操作がタッチパネルでしかできないため、行員に口頭で暗証番号を伝えてもらう必要があります。視覚障がいのある仲間も同様に、マイナ保険証を利用する際にタッチパネルで暗証番号を入力することに困っています。「信用はしているが、個人情報が守られているだろうか」という不安は消えることがありません。 無人化の流れは避けられない 「無人化」の流れが止まらない中、恐怖感が広がっています。タッチパネルではなく、突起のあるボタンがあれば自分で操作できるかもしれませんが、対応できるスタッフがいない場所では不安が募ります。特に、利用者の少ない駅や店舗では無人化の流れが避けられないと感じられています。 「より無人化が進むのはおそろしい」 「今後、より無人化が進むのはおそろしい。世の中は便利になるかもしれませんが、われわれにはバリアーが増えてくると知ってほしい。バリアフリーと人手不足の問題の折り合いを付けなければ、世の中が成り立っていかない」との訴えがあります。このような声を無視せず、バリアフリーと人手不足の問題の解決に向けて努力が必要です。 盲導犬の「拒否」 盲導犬の「拒否」が44%にも上ることが、日本盲導犬協会の調査で明らかになりました。そのうち半数以上が飲食店での出来事でした。調査に参加した視覚障がい者の34%が、タッチパネルの操作ができないと回答し、スマートフォンのアプリも「使いづらい」と感じる声がありました。このデジタル化の流れによって、目の見えない人々が取り残されている現状が浮かび上がります。 タッチパネルの難しさについて指摘 協会の担当者は、タッチパネルでの暗証番号入力の難しさについて指摘し、「数字の並びが毎回変わるものもあるため、目が見えない人にとっては対応が難しい」と述べました。民間業者に合理的配慮が義務付けられる改正障がい者差別解消法の施行により、配慮と理解が広がることが期待されています。 調査では、236人が社会参加への障壁などを報告しました。また、盲導犬を伴っての受け入れ拒否も後を絶たず、その中で最も多かったのは飲食店での114件(55%)でした。 盲導犬と社会のハードル:障壁と課題 盲導犬は、視覚障がい者の生活を支援し、自立した社会参加を可能にする重要な存在です。しかし、彼らとその盲導犬が直面する障壁や課題は、現代社会においても依然として存在しています。最新の日本盲導犬協会の調査によれば、盲導犬を利用する視覚障がい者の44%が、盲導犬を伴っての受け入れ拒否を経験しています。そのうちの半数以上が飲食店での出来事であり、これはまさに社会的な差別や無理解の表れと言えます。 スマートフォンのアプリも使用しにくい また、デジタル化の流れが加速する中で、盲導犬利用者にとって新たなハードルが浮かび上がっています。調査によれば、視覚障がい者の34%がタッチパネルの操作が難しいと感じ、スマートフォンのアプリも使いづらいとの声がありました。暗証番号を入力するタッチパネルの難しさは特に顕著であり、これは盲導犬利用者にとって大きな困難となっています。 社会参加がさらに難しくなる状況 盲導犬を利用する人々にとって、これらの問題は日常生活における大きな障壁となっています。たとえば、盲導犬利用者が飲食店で受け入れを拒否されるという経験は、その人の尊厳を傷つけるだけでなく、社会とのつながりを断ち切ることにもつながります。また、デジタル化の進展によって、本来の目的である自立した社会参加がさらに難しくなるという状況は、深刻な問題と言えます。 盲導犬利用者が安心して社会に参加できるようにするために 法律で盲導犬の受け入れを義務付けているにも関わらず、受け入れ拒否の事例が後を絶たないのは明らかな事実です。この問題の根本には、社会全体での理解と配慮の不足があります。盲導犬利用者が安心して社会に参加できるようにするためには、法律だけでなく、教育や啓発活動が重要です。特に、飲食店や交通機関など、日常生活で利用する場所での盲導犬への対応について、関係者の意識を高める取り組みが求められます。 情報にアクセスすることが困難 また、デジタル化による障壁も深刻な問題です。タッチパネルやスマートフォンの操作が困難な場合、盲導犬利用者は情報にアクセスすることが難しくなります。このような問題に対処するためには、アクセシビリティを考慮したデザインや技術の開発が不可欠です。また、デジタル化が進む中で、人間と機械の調和を図ることも重要です。各々のニーズに合わせた技術の開発や、人間と機械が協調して作業を行う仕組みの構築が求められます。 社会のバリアフリー 社会がバリアフリーであることは、すべての人々が自由に社会に参加し、生活するための基本的な条件です。盲導犬利用者が安心して社会に参加できるようにするためには、法律の遵守だけでなく、社会全体での理解と配慮が必要です。これは、盲導犬利用者だけでなく、あらゆる障がいを持つ人々が自立した生活を送るための基本的な要請であり、社会の課題として真剣に取り組むべき課題です。 障がい者差別解消法 2016年4月に施行された障がい者差別解消法は、障がいを理由とした不当な差別を禁止し、障がい者の生活上の困りごとや障壁を取り除くための「合理的配慮」を国や自治体に義務付けました。 この法律は、障がい者が社会参加する上でのハードルを下げるために重要な役割を果たしています。特に、2016年4月からの民間事業者への義務の拡大は、社会全体におけるバリアフリーの実現に向けた重要な一歩となりました。 合理的配慮とは 合理的配慮とは、障がい者が日常生活や社会活動を行う際に、その障がいに合わせた配慮を行うことを指します。 例えば、車いす利用者のための段差スロープの設置や、視覚障がい者のための点字案内や音声案内、手話通訳サービスの提供などが挙げられます。これらの配慮が行われることで、障がい者も他の人々と同じように社会に参加し、生活を送ることができるようになります。 従業員や経営者の間での認識の差 しかしながら、法律が整備されているにもかかわらず、実際の現場ではまだまだ障がい者に対する理解不足が見られます。特に、民間事業者における合理的配慮の実施は、まだまだ課題が残されています。例えば、飲食店や小売店などの民間事業者では、障がい者が利用しやすい環境を整備することが求められますが、実際にはその実施が不十分な場合があります。また、合理的配慮の必要性や方法について、従業員や経営者の間での認識の差も問題となっています。 社会全体での意識改革や教育 そのため、法律だけでなく、社会全体での意識改革や教育が必要です。障がい者への理解を深め、合理的配慮の実施を促進するためには、企業や学校、地域社会など様々なレベルでの取り組みが求められます。特に、民間事業者においては、障がい者やその支援者との協力体制の構築や、必要な設備やサービスの提供に向けた取り組みが重要です。 さらに、合理的配慮の実施にはコストや労力が必要となる場合がありますが、その負担が適切かどうかも重要なポイントです。合理的配慮の範囲内で、障がい者にとっての利便性や安全性を確保しつつ、事業者側の負担が過度にならないようにバランスを取ることが求められます。 効果や課題の解決には時間がかかる 最後に、障がい者差別解消法の施行からまだ数年しか経っていないため、その効果や課題の解決には時間がかかることも考慮しなければなりません。しかし、この法律が障がい者の社会参加を促進し、バリアフリーな社会の実現に向けた一歩となることを期待しています。 視覚障がい者への支援:バリアフリーな社会の実現への一歩 視覚障がい者が社会で自立して活動するためには、バリアフリーな環境が必要不可欠です。彼らが安心して社会に参加し、生活を送るためには、身体的な障壁だけでなく、社会的な障壁も取り除く必要があります。そのためには、視覚障がい者への支援が欠かせません。 周囲の理解と配慮 まず、視覚障がい者にとって最も重要なのは、周囲の理解と配慮です。視覚障がい者が安全かつ円滑に日常生活を送るためには、周囲の人々が彼らの状況や必要性を理解し、適切な支援を提供することが重要です。 例えば、視覚障がい者が道路を横断する際には、周囲の人々が彼らの存在に気付き、安全な通行をサポートすることが必要です。また、公共施設や交通機関などの利用においても、視覚障がい者に対する丁寧な案内や支援が求められます。 技術の活用 次に、技術の活用が視覚障がい者の支援に大きな役割を果たします。近年では、音声案内や点字表示などのアシストテクノロジーが進化し、視覚障がい者が情報にアクセスする手段が大幅に向上しました。 スマートフォンやタブレットを活用したアプリケーションも、視覚障がい者の生活を豊かにするツールとして注目されています。こうした技術の普及と活用は、視覚障がい者が社会とのつながりを強化し、より自立した生活を送るための支援となります。 法律や政策の整備 また、法律や政策の整備も視覚障がい者への支援に不可欠です。障がい者差別解消法をはじめとする法律は、視覚障がい者の権利を保護し、バリアフリーな社会の実現に向けた基盤を整備しています。さらに、地方自治体や関連団体が実施する支援プログラムや啓発活動も、視覚障がい者の社会参加を促進する上で重要な役割を果たしています。 しかし、現実にはまだまだ課題が残されています。視覚障がい者が日常生活や社会参加を行う際に直面する障壁は多岐にわたり、その解決には時間と努力が必要です。例えば、公共施設や交通機関におけるバリアフリー化の進展や、就労支援の強化などが求められています。 様々なレベルでの連携と協力が不可欠 最後に、視覚障がい者への支援は個々の取り組みだけでなく、社会全体での取り組みが不可欠です。視覚障がい者とその支援者、地域社会や企業など、様々なレベルでの連携と協力が求められます。これにより、バリアフリーな社会の実現に向けた一歩が踏み出され、視覚障がい者がより豊かな生活を送ることができるでしょう。 まとめ 視覚障がい者にとって、デジタル化の進展は新たな課題を生み出しています。タッチパネルの普及や無人化の流れは、彼らが自立して社会に参加する際のハードルを高くしています。 しかし、この課題に立ち向かうことで、よりバリアフリーな社会の実現に向けた一歩を踏み出すことができます。法律や技術の進化、そして社会全体での理解と協力が重要です。我々は、視覚障がい者の声に耳を傾け、彼らが安心して社会に参加し、豊かな生活を送ることができるように努力を続けなくてはいけません。 参考 増えるタッチパネルに困ってます 視覚障がい者には何も伝わらず 「世の中は便利になるけど」増す生きづらさ:東京新聞 TOKYO Web -
障がい者基本計画を見てみよう!第4次計画の基本理念と原則とは?
障がい者基本計画(第4次)は、障がい者の尊厳と自立を尊重し、その社会参加を支援する基本理念に基づき、平等、無差別、合理的配慮の原則を重視して策定されました。 障がい者基本計画(第4次)における基本的な考え方について、以下の要点をまとめました。 基本理念と基本原則 基本理念:障がい者の尊厳と自立を尊重し、その社会参加を支援することを基本理念とします。 基本原則:平等、無差別、合理的配慮の原則を重視します。すべての人に対し、差別なく適切な支援を提供します。 昭和45年に制定された心身障がい者対策基本法から始まる 我が国の障がい者施策は、昭和45年に制定された心身障がい者対策基本法から始まりました。この法律は、心身障がい者の福祉に関する施策を基本的なものとして定め、当時は心身障がい者という表現が用いられていました。 平成5年には、この法律が障がい者基本法に改正され、心身障がい者だけでなく精神障がい者も含めた「障がい者」として位置付けられました。法の目的も、障がい者の自立とあらゆる分野の活動への参加の促進に変更されました。 着実に取り組みが進められている その後の改正では、障がい者差別を禁止する基本的理念が盛り込まれ、中央障がい者施策推進協議会が設立されました。平成23年には、我が国が署名した障がい者の権利に関する条約の批准に向け、法の改正が行われました。社会モデルの考え方や合理的配慮の概念が導入され、障がい者政策委員会が新たに設置されました。 障がい者基本計画の策定も進み、平成25年には第4次の基本計画が閣議決定されました。これまでの取組では、障がい者の自己決定の尊重や意思決定支援、当事者本位の総合的な支援、障がい特性に配慮した支援、アクセシビリティの向上などが重視されてきました。これらの施策分野において、障がい者政策委員会による監視を経て、着実に取り組みが進められています。 施策の方向性や政策課題について幅広く議論が行われた 障がい者政策委員会は、平成28年10月以降、本基本計画の策定に向けた熱心な調査と審議を行ってきました。この間、障がい者施策の分野では、2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催や障がい者差別解消法の施行など、大きな変化がありました。委員会では、これらの動向を踏まえつつ、障がい者施策の方向性や政策課題について幅広く議論が行われました。 その結果、計11回の審議を経て、平成30年2月に「障がい者基本計画(第4次)の策定に向けた障がい者政策委員会意見」がまとめられました。政府は委員会の意見に基づき、本基本計画の案を作成し、パブリックコメントを経て、平成30年3月に閣議決定しました。 共生社会の実現やさまざまな社会的目標に貢献する期待 本基本計画は、障がい者基本法の目的である障がい者の自立と社会参加の支援に加えて、共生社会の実現や2020年東京オリンピック・パラリンピックでの活躍、障がい者施策の社会的意義など、さまざまな社会的目標に貢献することが期待されています。これらの目標を達成するためには、本基本計画に基づいた施策の策定と実施が重要であり、常にこれらの目標を念頭に置いて取り組んでいくことが必要です。 障がい者の自立と社会参加を支援する施策 障がい者基本計画(第4次)は、障がい者の自立と社会参加を支援する施策を総合的かつ計画的に推進するために策定されました。これは、基本法第11条第1項に基づくものであり、政府が行う障がい者支援施策の中核的な計画です。 対象期間は平成30年度からの5年間です。構成は、障がい者基本計画(第4次)に関するⅠ、基本的な考え方に関するⅡ、各分野における障がい者施策の基本的な方向に関するⅢの3つの部分から成り立っています。 障がい者の権利を保護する国際的な動き 条約との関係においては、障がい者の権利を保護する国際的な動きがありました。国際連合総会では、障がい者の権利に関する宣言が採択され、障がい者の人権の重要性が認識されました。その後、障がい者の権利を包括的かつ総合的に保護する国際条約の検討が行われ、平成18年に条約が国連総会で採択されました。 障がい者の権利に関する国際条約は、障がい者の人権と基本的自由の享有を確保し、彼らの固有の尊厳を促進することを目的としています。その主な内容は以下の通りです。 一般原則:障がい者の尊厳、自律、自立の尊重、無差別性、社会参加と包摂が挙げられます。 一般的義務:合理的配慮の実施、全ての障がい者の人権と基本的自由の完全な実現と促進が含まれます。 障がい者の権利実現のための措置:身体の自由や拷問の禁止などの自由権と、教育や労働などの社会権に関する締約国の取るべき措置が含まれます。 条約の実施のための仕組み:国内の枠組みの設置や障がい者権利委員会による報告の検討が含まれます。 日本はこの条約に署名し、国内法の整備を進めてきました。障がい者基本法や障がい者自立支援法、障がい者差別解消法などが整備され、平成26年に批准されました。その後、障がい者政策委員会による監視を経て、政府報告が作成され、障がい者権利委員会に提出されました。 障がい者に関する基本的な考え方が明確に示されている 障がいの捉え方に関して、従来の医学モデルでは心身の機能の障がいのみが問題視されていましたが、条約では社会モデルの考え方が採用され、障がい者が直面する制限は心身の機能の障がいだけでなく、社会的な障壁によっても生じるとされています。 次に、平等・無差別及び合理的配慮について、条約は全ての障がい者に対する平等な権利と基本的自由の確保を促進し、合理的配慮の提供を求めています。合理的配慮は、障がいに基づく差別を禁止し、障がい者の権利を保護するための重要な要素です。また、障がい者の意思決定過程への積極的な参加も求められています。 最後に、条約の実施に関する仕組みについて、国内の枠組みの設置や障がい者権利委員会による報告の検討が規定されています。障がい者権利委員会は、専門家によって構成され、締約国の報告を審査し、提案や勧告を行う役割を担っています。このような仕組みにより、締約国は条約の実施について国際的に監視されることになります。 障がい者の権利の実現に向けた努力がより効果的に 障がい者基本計画(第4次)は、条約の批准後に策定される初めての計画であり、その整合性が非常に重要です。本基本計画では、条約の理念を反映し、各分野の施策と条約の各条項との対応関係を明示しています。これにより、計画の実施状況と条約の国内実施の状況を対応させ、効果的かつ適切な取り組みを進めることが期待されます。 さらに、障がい者政策委員会による条約の実施状況の監視を円滑化するために、本基本計画には、条約の実施状況に関する障がい者権利委員会からの勧告や意見を取り入れる機構が組み込まれています。これにより、計画と条約に関連する取り組みの連携が適切に行われ、障がい者の権利の実現に向けた努力がより効果的に推進されることが期待されます。 オリンピック・パラリンピック競技大会 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会は、障がいの有無にかかわらず、世界中から多くの人々が集まり、パラリンピック競技大会では障がいのある選手が圧倒的なパフォーマンスを披露することで、共生社会の実現に向けた大きな機会となります。 政府は、この大会に向けて心のバリアフリーやまちづくりの施策を推進し、障がい者の視点を反映させながら取り組みました。具体的には、社会のあらゆる場面でアクセシビリティ向上の視点を取り入れて施策を展開し、公共交通機関のバリアフリー化や移動しやすい環境の整備、障がい者に配慮したまちづくりを進めています。 心のバリアフリーへの理解 また、本基本計画では、文化芸術活動・スポーツの振興を独立した施策分野として格上げし、パラリンピック競技大会を念頭に置いた施策を強化しています。障がい者スポーツの競技性の高さに焦点を当て、アスリートの育成強化や地域でのスポーツ環境整備などに力を入れています。 さらに、2020年東京オリンピック・パラリンピックを通じて共生社会の姿を広く発信し、心のバリアフリーへの理解を深め、社会全体で推進することも重要視されています。 基本的な考え方 基本理念 条約は、障がい者の人権と基本的自由を確保し、彼らの固有の尊厳を尊重することを目指しています。基本法の改正においても、この理念に基づき、障がいの有無にかかわらず、すべての国民が等しく基本的人権を享有し、障がいの有無による分け隔てがない共生社会を実現する必要があります。本基本計画は、この社会の実現に向け、障がい者を支援しながら自己決定の主体として捉え、彼らの能力を最大限発揮できるよう支援し、社会的な障壁を除去する方向性を定めています。 基本原則 政府は、障がい者を支援しながら自らの決定に基づき社会のあらゆる活動に参加する主体として捉え、条約の理念に基づいて改正された基本法の基本原則に従って、障がい者の自立と社会参加を支援する施策を総合的かつ計画的に実施します。 地域社会における共生等 基本法第3条や条約の理念に基づき、本基本計画では障がい者が尊厳を持ち、尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを前提としています。障がい者施策の実施においては、以下の点に重点を置きます。 社会参加の機会の確保:障がい者が社会、経済、文化などあらゆる分野で活動に参加できるよう機会を提供します。 共生の機会の確保:障がいの有無にかかわらず、地域社会で他者と共生できる環境を整え、生活の選択肢を提供します。 コミュニケーション手段の選択の機会:障がい者が意思疎通に適した手段を選択できるよう、言語や手話などのコミュニケーション手段を提供します。 情報取得の機会の拡大:障がい者が情報を取得し、利用する手段を選択できるよう、情報へのアクセスの機会を拡大します。 差別の禁止 基本法第4条や条約、障がい者差別解消法に基づき、障がい者差別やその他の権利利益の侵害行為を禁止し、合理的配慮を提供する必要があります。具体的には、以下の点に注意を払います。 差別の禁止:障がい者差別や権利利益の侵害を禁止します。 合理的配慮の提供:社会的障壁を除去するために、合理的配慮を提供します。障がい者差別解消法の実効性を確保するため、施行状況を定期的に検討し、必要に応じて見直しを行います。 国際的協調 基本法第5条や条約第32条に基づき、共生社会の実現は国際的な協調の下で行われる必要があります。障がい者の自立や社会参加の支援は国際社会と密接に関係しており、以下の点に注意を払います。 国際協力の重要性:共生社会の実現に向けた施策は国際協力に基づいて行われるべきです。 条約の遵守と報告:条約を批准し、障がい者権利委員会に政府報告を提出するなど、国際的な枠組みとの連携を強化します。 まとめ 障がい者基本計画(第4次)は、障がい者の尊厳と自立を尊重し、その社会参加を支援する基本理念に基づいています。平等、無差別、合理的配慮の原則を重視し、すべての人に対し差別なく適切な支援を提供します。この計画は国際的な協調の下で推進され、障がい者の権利を保護し、共生社会の実現に向けた取り組みがさらに強化されることが期待されます。 参考 障がい者基本計画(第4次計画 平成30年度~平成34年度) -
障がい者基本法を見てみよう!平成16年6月に改正された障がい者基本法の主なポイントとは?
平成16年6月に改正された障がい者基本法は、平成16年5月12日に衆議院内閣委員会委員長の提案によって国会に提出され、5月28日に参議院本会議で可決されました。そして、同年6月4日に公布・施行されました(一部を除く)。この改正法の成立に際しては、参議院で附帯決議が付されました。 改正の趣旨 障がい者基本法の一部改正案の要綱によれば、この改正の趣旨は、現代の障がい者の状況や社会経済の変化に対応し、彼らの自立と社会参加を促進することにあります。このため、障がいを理由とする差別や権利侵害を禁止し、都道府県や市町村には障がい者のための基本的な施策計画の策定を義務付け、中央障がい者施策推進協議会を設立するなどの改正が行われます。 目的 第一条の目的は、障がい者の自立と社会参加を支援する施策を総合的かつ計画的に推進し、彼らの福祉を増進することです。第二条の目的は、障がい者の自立や社会への積極的な参加を促進するための取り組みを支援し、障がい者の福祉を向上させることを目的としています。第三条では、障がい者に対する差別や権利侵害を禁止する基本的理念が明確化されます。第四条では、国と地方公共団体に障がい者の権利擁護や差別防止、自立支援の責務が課されます。 改正案では新たに第五条が追加 また、改正案では新たに第五条が追加され、国民に障がい者の人権尊重と差別撤廃に貢献する責務が課せられます。自立への努力に関する規定は第六条で削除され、障がい者週間の規定が新たに追加されます。施策の基本方針も改められ、障がい者の自主性尊重と地域での自立した生活を営む支援が強調されます。 障がい者基本計画等に関する改正 障がい者基本計画等に関する改正は、都道府県、市町村、国、地方公共団体などに対する責務の明確化を図っています。都道府県は、障がい者基本計画を基本とし、障がい者の地域ごとの状況を考慮して、障がい者の施策計画である都道府県障がい者計画を策定しなければなりません。同様に、市町村も障がい者基本計画と都道府県の計画を基に、地域の状況に即した施策計画である市町村障がい者計画を策定しなければなりません。 閣議での決定が求められる また、障がい者基本計画は内閣総理大臣が策定するものであり、その際には関係行政機関の長との協議や中央障がい者施策推進協議会の意見を踏まえ、閣議での決定が求められます。更に、地方自治体が地域において障がい者施策を推進する場合、地方障がい者施策推進協議会の設置が求められ、障がい者や関係者の意見を尊重した施策の策定が要求されます。障がい者基本計画や障がい者施策に関する計画が策定された場合は、都道府県知事や市町村長はそれを地方議会に報告しなければなりません。 障がい者の日常生活を支援するための様々な施策 医療や介護、福祉用具の提供、教育、職業相談、公共的施設のバリアフリー化など、障がい者の日常生活を支援するための様々な施策が、国や地方公共団体によって取られることが定められています。 第十四条では、情報の利用におけるバリアフリー化が要求されています。国や地方公共団体は、障がい者が円滑に情報を利用し、意思を表示できるようにするため、障がい者にとって利便性の高い電子計算機や情報通信機器の普及、電気通信や放送における障がい者の利便性の向上、そして障がい者向け情報提供施設の整備など、必要な施策を講じなければなりません。さらに、行政の情報化や公共分野における情報通信技術の活用に際しては、特に障がい者の利用を考慮し、配慮しなければなりません。 相談業務や成年後見制度、障がいの予防に関する基本的な施策 第十五条では、障がい者に関する相談業務や成年後見制度などの施策や制度が適切に行われ、また広く利用されるようにするための施策が求められています。 第十六条では、障がいの予防に関する基本的な施策が定められています。国や地方公共団体は、難病など障がいの原因となる疾病の予防や治療の困難さに鑑み、関連する調査や研究を推進し、その結果に基づいて障がい者への支援を行うよう努めなければなりません。 中央障がい者施策推進協議会の設置 第十七条では、中央障がい者施策推進協議会(中央協議会)の設置が規定されています。内閣府が中央協議会を設け、障がい者基本計画に関する重要事項を処理します。この協議会は、障がい者や障がい者の福祉に関わる専門家、学識経験のある者からなる委員で構成され、彼らの意見を踏まえて政府の政策に対する助言や提言を行います。 第十八条では、法律の施行期日や検討事項に関する規定が述べられています。 施行期日: この法律は、公布の日から施行されます。ただし、第十七条については、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行されます。また、第九の一の2については、平成十九年四月一日から施行されることとなります。 検討: 政府は、この法律の施行後五年を目途として、改正後の規定の実施状況や障がい者の社会経済情勢の変化などを考慮し、障がい者に関する施策の在り方について検討を行います。その結果に基づいて必要な措置を講じます。 その他の規定: 必要な規定が整備されることが求められています。 障がい者基本法の改正案の該当部分 第四条 国及び地方公共団体の責務を定め、障がい者の権利擁護、差別防止、自立支援、社会参加促進等により障がい者の福祉を増進する責務を課します。第六条を削除します。 第五条 国民の責務として、社会連帯の理念に基づき、障がい者の人権尊重と差別なき社会参加の実現に努めることを規定します。 これに伴い、既存の第五条を第六条とし、新たに国民の理解に関する規定を加えます。 第二章 既存の第九条を第十一条に変更し、その後に新たに障がい者の福祉に関する基本的施策を規定した第二章を追加します。 第十二条(医療、介護等) 国及び地方公共団体に、障がい者の医療の提供やリハビリテーションの実施など、福祉を増進するための施策を講じる責務を課します。 医療やリハビリテーションの研究・開発・普及の促進、障がい者が必要な支援を受けられるよう施策を講じることが求められます。 専門的技術職員の育成や福祉用具・身体障がい者補助犬の提供に関する施策も行われるよう努めなければなりません。 第十三条(年金等) 障がい者の自立と生活の安定を支援するために、国や地方公共団体は年金や手当などの制度に関する施策を講じなければなりません。 第十四条(教育) 障がい者が適切な教育を受けられるように、国や地方公共団体は教育の内容や方法の改善・充実を図るとともに、教育に関する調査や研究、学校施設の整備を促進しなければなりません。 第十五条(職業相談等) 障がい者が適切な職業に就けるように、国や地方公共団体は障がい者の能力や状態に応じた職業相談や訓練、紹介などの支援を行う必要があります。 第十六条(雇用の促進等) 障がい者の雇用を促進するために、国や地方公共団体は適した職種や職域に対する障がい者の優先雇用の施策を講じるとともに、事業主に対して雇用の安定を図るための支援を行う必要があります。 第十七条(住宅の確保) 障がい者の生活の安定を図るため、国や地方公共団体は障がい者向けの住宅を確保し、日常生活に適した住宅の整備を促進する必要があります。 第十八条(公共的施設のバリアフリー化) 官公庁施設や交通施設などの公共的施設において、障がい者が利用しやすいような施設の構造や設備の整備を国や地方公共団体、そして事業者が推進する必要があります。 第十九条(情報の利用におけるバリアフリー化) 電子計算機や情報通信機器などの普及、電気通信や放送サービスの利用の障がい者向けの利便性の増進、障がい者向けの情報提供施設の整備など、障がい者が情報を円滑に利用できるようにするための施策が必要です。 第二十条(相談等) 障がい者に関する相談業務や権利保護制度などが適切に行われ、広く利用されるように国や地方公共団体が努める必要があります。 第二十一条(経済的負担の軽減) 障がい者やその扶養者の経済的負担を軽減し、自立を促進するために、税制上の措置や公共施設の利用料の減免などの施策が必要です。 第二十二条(文化的諸条件の整備等) 障がい者の文化的活動やレクリエーション、スポーツ活動の支援のために、施設や設備の整備など必要な施策が講じられるべきです。 第七条の改正 障がい者計画の策定に関する規定や、施策の推進に必要な行政機関間の連絡調整についての改正が行われています。さらに、障がい者施策における地方の意見や関係者の意見を尊重する方針が盛り込まれました。 第六条の二(障がい者週間) 障がい者週間の期間や日付が具体化され、12月3日から12月9日までの1週間とされることが提案されています。 その他の改正 さまざまな条項や見出しの修正が行われ、障がい者基本法の体系や内容が整理されています。特に、地方障がい者施策推進協議会に関する規定の改正や、中央障がい者施策推進協議会の名称変更などが含まれています。 障がい者基本計画に関連する事項 中央障がい者施策推進協議会は、障がい者基本計画に関連する事項を処理するために内閣府に置かれる組織です。以下に、この改正案の主なポイントをまとめます。 組織と人員 中央協議会は最大で30人の委員で構成され、障がい者や障がい者の福祉に関わる専門家、学識経験者などが内閣総理大臣によって任命されます。彼らの委員会の構成は、様々な障がい者の意見を考慮して行われることが求められます。委員は非常勤であり、中央協議会の組織や運営についての詳細は政令で定められます。 法改正内容 障がい者基本法の改正では、基本計画の策定について「策定しなければならない」という義務が明記されています。 施行期日 この法律は公布の日から施行されますが、内閣府設置法の改正に関する規定は公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定められる日から、障がい者基本法の改正規定は平成19年4月1日から施行されます。 検討 施行後5年を目途に、この法律の実施状況や障がい者を取り巻く社会経済情勢の変化などを勘案して、障がい者に関する施策の在り方について検討を行い、必要な措置を講ずることが政府に求められています。 この法律改正案は、障がい者に対する差別や権利の侵害を防止し、障がい者の福祉を向上させるための包括的な取り組みを進めるためのものです。 まとめ 障がい者基本法の改正は、障がい者の自立と社会参加を促進するための包括的な取り組みを進めるものであり、施行後の効果検証や社会の変化に応じた柔軟な対応が求められます。障がい者の権利擁護や福祉増進に向けたこの法律は、日本社会の包摂性と共生性を高める重要な一歩となるでしょう。 参考 障がい者基本法の改正について(平成16年6月) -
どこから「過重な負担」になる?障がい者差別解消法改正に伴う合理的配慮
4月から施行される障がい者差別解消法の改正により、障がいを理由にした「不当な差別的取り扱い」が禁止され、障がいのある人への合理的配慮が義務化されることとなりました。しかし、これに関連してSNS上では様々な意見が出されており、特に障がいを持つ人への「合理的配慮」について議論が巻き起こっています。 専門家による見解が求められている この法改正を受けて、事業者はどのような準備をすべきか、また当事者が必要とする合理的配慮について、専門家による見解が求められています。SNS上では、「合理的配慮とわがままの線引きは難しい」「少しでも障がい者理解が進むことを願う」といった声が見られます。障がい者差別解消法の改正により、4月からは行政機関や事業者が障がい者の困りごとに対応することが義務付けられることになりました。 パリの空港での経験 障がい者理解の促進に努めるeラーニング事業を展開する株式会社Lean on Meの代表取締役、志村駿介氏は、自身もダウン症の弟を持つ立場から、「合理的配慮」の重要性を強調しています。彼はパリの空港での経験を挙げ、「日本の空港では弟ではなく僕に対応することが多い。弟に対してもまず声をかけ、意思疎通ができるか確認し、難しければ僕に話しかけるという一歩の配慮が欲しい」と語ります。 事業者側に求められる「合理的配慮」 事業者側に求められる「合理的配慮」とは、障がいのある人々が日常生活や社会活動を円滑に行うために必要な配慮や支援を指します。具体的には、例えば自閉症スペクトラム症で感覚過敏がある場合、遠くで話される声が耳に近い位置で叫ばれるように聞こえることがあります。このような場合、飲食店などでそのような症状を伝えた際に、個室などの提供や、騒音の少ない場所への案内などが求められます。 また、知的障がいのある方が飲食店で料理を選ぶ際には、文字だけのメニュー表では理解しにくい場合があります。そのような場合には、絵カードなどを用意してメニューに載せることで、指差しで料理を選ぶことができるように配慮することが重要です。 合理的配慮の提供義務に直接的な罰則はない しかし、事業者がこれらの配慮を行う際には、設備や人手不足などの制約がある場合もあります。現状では、合理的配慮の提供義務に直接的な罰則はありませんが、それぞれの状況に合わせたガイドラインを準備し、事業者と利用者がお互いにコミュニケーションをとることが重要です。このような取り組みによって、障がいのある人々が社会参加をより円滑に行える環境が整えられることが期待されています。 正直なコミュニケーションが不可欠 合理的配慮に対する理解を深めるためには、正直なコミュニケーションが不可欠です。事業者は、「何時から何時の間であればお店は空いているので対応できる」といった具体的な情報を提供することで、利用者との信頼関係を築きます。 同時に、「なんとかしてサービスを提供したいけどどうしても無理」という本音を率直に伝えることで、トラブルを回避できます。日本はおもてなしの文化やホスピタリティに富んでおり、事業者が柔軟かつ誠実に対応する姿勢は、この文化の一環と言えるでしょう。 合理的配慮の実践例をリーフレットやデータベースで提供 政府は、合理的配慮の実践例に関する情報をリーフレットやデータベースで提供しています。志村氏は、企業がこうした情報を活用し、柔軟に対応することを呼び掛けています。経営者が合理的配慮を企業の負担とみなす誤解もあるようですが、実際にはケースバイケースでの対応が重要です。失敗しても構わないので、実際の現場での経験を積み重ね、次に活かしていくことが重要です。障がいのある方とのコミュニケーションや経験を通じて、より理解深まった配慮が実現されるでしょう。 対話をして理由を教えてもらい対応策を共に考えるべき 障がいのある人への合理的配慮について、世界ゆるスポーツ協会代表理事の澤田智洋氏は、車椅子の友人と一緒にレストランに行った際に、車椅子という理由だけで拒否されることがあると指摘しています。 彼は、このような場合にはまず対話を始め、理由を教えてもらい、対応策を共に考えるべきだと主張しています。彼の基本的な考え方は、当たり前のコミュニケーションを大切にし、お互いに納得のいく解決策を見つけることです。 事業者側の負担が過度にならない範囲 一方で、義務付けられる合理的配慮については、事業者側の負担が過度にならない範囲で行われるべきだと説明しています。 例えば、飲食業においては店の規模や混雑状況によって対応が異なるため、一律には定められないと述べています。また、具体的なケースで介助などの対応が難しい場合には、断ることができるとも述べています。 可能性のある対応策について考える その上で、澤田氏はお互いに最適な判断をすることの重要性を強調し、可能性のある対応策についても指摘しています。 例えば、車椅子が他のお客さんにぶつかる心配がある場合は、テーブルや椅子の配置を変えることで解決できるかもしれませんし、入り口の段差に対応するために簡易スロープを設置することも考えられます。彼の提案は、柔軟な対応とお互いへの配慮を重視したものであり、現実的な解決策を見つけるための示唆に満ちています。 障がいのある方と対話しながら解決策を模索 澤田氏は、極端に「配慮できる・できない」という白黒の判断が多いことを指摘しています。実際には、少しの工夫やグレーゾーンが多く存在し、義務化された今回の機会を通じて、これらの問題に対処する良い機会だと述べています。 しかし、事業者側だけで考えても見当違いなアイデアになることがあるため、障がいのある方と対話しながら解決策を模索することが重要だと述べています。 解決策は一つではない 感情に基づくのではなく、ファクトに基づいた対話が重要であると強調しています。例えば、狭い店舗で車椅子の方が入店できない場合、店舗改築まで行う必要はなく、代わりにテイクアウトの提案や他の利用方法の検討が可能です。 そして、必ずしも多額の費用をかける必要はなく、解決策は一つではないと述べています。このようなアプローチを続けることで、社会全体の空気感が良くなる可能性があると期待しています。 柔軟で創造的な対応を促し、問題解決において障がいのある方との協力が不可欠であることを示唆しています。この提案は、現実的で包括的なアプローチを通じて、社会の包摂性を高めるための一歩となるでしょう。 障がい者差別解消法: 社会の包摂を促進する法的枠組み 障がい者差別解消法は、障がいのある人々が差別されることなく社会参加を実現するための法的枠組みです。この法律は、障がいのある人々が日常生活や社会活動において様々な障壁に直面し、それが不公平な取り扱いや排除につながる可能性があることを認識し、その解消を目指しています。 重要な要素:合理的配慮の義務化 障がい者差別解消法の重要な要素の一つは、合理的配慮の義務化です。合理的配慮とは、障がいのある人々が平等な機会を享受するために必要な支援や配慮を提供することを意味します。これは、個々のニーズや状況に応じて異なる支援を提供することを意味し、バリアフリーな環境の整備やアクセシブルな情報提供、介助や支援の提供などが含まれます。 この合理的配慮の義務化により、行政機関や事業者は、障がいのある人々が利用するサービスや施設において、個々のニーズや状況に応じた適切な支援を提供する義務を負うこととなりました。例えば、公共交通機関がバリアフリー化されることで、車椅子を利用する人々や高齢者にとっても移動が容易になり、社会へのアクセスが向上します。 法律の実践には課題がある しかし、この法律の実践には課題もあります。例えば、財政的な制約や人材不足などが挙げられます。特に、中小企業や地方自治体など、資源が限られている組織では、合理的配慮の実践が困難な場合があります。そのため、適切な支援が提供されないケースも依然として存在します。 行政機関や事業者、一般市民が連携する必要 障がい者差別解消法の実践においては、法律の枠組みだけでなく、社会全体での意識改革や協力が必要です。行政機関や事業者、一般市民が連携し、障がいのある人々が社会参加を実現するための支援を行うことが重要です。そのためには、情報の提供や啓発活動、資源の共有など、様々な取り組みが必要です。 社会の包摂を促進するための重要な法的基盤 障がい者差別解消法は、社会の包摂を促進するための重要な法的基盤です。この法律の実践により、障がいのある人々が差別されず、平等な機会を享受し、自立して社会に参加することが実現されるでしょう。しかし、課題があることも事実であり、社会全体での取り組みが求められています。 社会の包摂を促進する合理的配慮の重要性 障がい者差別解消法の改正に伴い、合理的配慮が2024年4月から義務化されました。この合理的配慮の導入により、障がいのある人々が社会で平等な参加と活動を実現するための支援が法的に保証されることになりました。しかし、合理的配慮は単なる法的義務に留まらず、社会の包摂を促進するための重要な概念です。 個々のニーズや状況に応じた適切な支援や配慮が重要 障がい者差別解消法における合理的配慮は、障がいのある人々が障壁なく社会に参加できるようにすることを目指しています。そのため、個々のニーズや状況に応じた適切な支援や配慮が提供されることが重要です。これにより、障がいのある人々が自立して活動できる環境が整備され、社会全体がその利益を享受することが期待されます。 合理的配慮の実践には柔軟性と創造性が必要 合理的配慮の実践には、柔軟性と創造性が求められます。事業者や行政機関は、一人ひとりのニーズや状況に合わせて適切な支援を提供する必要があります。そのためには、障がいのある人々との対話や協力が欠かせません。障がいのある人々が自らの経験やニーズを積極的に提供し、その声がしっかりと反映されることが重要です。 社会の多様性を尊重し、包摂性を高めるための重要な手段 合理的配慮は、社会の多様性を尊重し、包摂性を高めるための重要な手段です。法的義務だけでなく、人々がお互いを尊重し、支え合う社会を築くために、合理的配慮の実践が不可欠です。それによって、障がいのある人々が真に平等な機会を享受し、社会全体が豊かさを得ることができるでしょう。 障がい者差別解消法の改正により、合理的配慮が義務化され、障がいのある人々が社会での参加と活動を円滑に行える環境が整備されました。この法改正は、障がいのある人々に対する差別をなくし、社会の多様性と包括性を促進するための重要な一歩です。 障がいのある人々が自立して活動できる環境を整える必要 事業者や行政機関は、一人ひとりのニーズや状況に応じて適切な支援を提供し、障がいのある人々が自立して活動できる環境を整える必要があります。 また、合理的配慮を通じて、社会全体が障がいのある人々との理解と協力を深めることも重要です。お互いを尊重し、コミュニケーションを大切にすることで、障がいのある人々との共生を実現する社会を築くことが可能です。このような社会の構築には、一人ひとりの意識改革と積極的な行動が欠かせません。 まとめ 障がい者差別解消法の改正は、障がいのある人々が平等な機会を享受し、自己実現を果たすための基盤を整備する重要な取り組みです。合理的配慮を通じて、社会全体が包括的で包摂的な環境を実現するために、今後もさらなる努力が求められるでしょう。 参考 障がい者への「合理的配慮」義務化 どこから“過重な負担”? グレーゾーンとの向き合い方(ABEMA TIMES)#Yahooニュース -
「障がい者週間」と「共生社会の構築」障がいのある人に対する理解を深めるための基盤づくり
障がい者基本計画(第4次)に基づき、障がいのある人との共生社会を推進するため、広報・啓発活動が重要視されています。内閣府が発行する障がい者白書の第2章では、障がい者週間を活用して、国民の理解を深める取り組みが行われています。本記事ではどのような事が行われているのか見ていきたいと思います。 毎年12月3日から9日までの1週間「障がい者週間」 障がい者週間は、毎年12月3日から9日までの1週間が指定され、共生社会の理念の普及と障がいに対する理解を促進することを目的としています。政府は、障がい者週間に向けて様々なイベントを展開しています。 例えば、小・中学生などから障がいのある人とのふれあいをテーマにした作文やポスターの募集が行われ、最優秀作品が選定されます。また、関連行事では、一般国民を対象に障がい者に関するセミナーが開催され、障がい者関係団体との連携も図られています。 障がい者週間の関係表彰式では、最優秀作品や功労者に内閣総理大臣表彰が授与され、その功績が称えられます。これらの取り組みを通じて、障がい者との理解を深め、共生社会の実現に向けた一助となることが期待されています。 各種の広報・啓発活動が行われ障がいのある人への理解を促進 様々な週間・月間の取り組みが行われています。例えば、9月は「障がい者雇用支援月間」、10月は「第65回精神保健福祉普及運動」、12月は「人権週間」となっており、これらの期間を通じて障がいに関する理解を深めるための活動が展開されています。また、4月には「発達障がい啓発週間」があり、地方公共団体や関係団体による啓発活動が行われています。 バリアフリー・ユニバーサルデザインの推進功労者表彰 バリアフリー・ユニバーサルデザインの推進功労者表彰も行われています。高齢者や障がいのある人、妊婦、子供連れの人々が安全かつ快適な社会生活を送るために、バリアフリー・ユニバーサルデザインの推進が重要視されています。内閣総理大臣表彰等を通じて、顕著な功績や功労を持つ個人や団体が表彰され、その取り組みが称えられています。平成29(2017)年度には、9団体が表彰されました。 障がい者政策委員会は会議の情報提供を行う 障がい者政策委員会では、会議の情報提供に積極的で、インターネットを通じて会議の全状況を動画や音声、手話、要約筆記の文字情報として一定期間提供しています。 障がい者白書は、障がい者基本法第13条に基づき、政府が毎年提出する報告書です。平成28年版からは、視覚障がい者や印刷物を読むことが難しい人々のためにデジタル録音図書である「マルチメディアデイジー」版が作成され、内閣府のホームページで公表されています。 福祉教育の推進 福祉教育の推進では、学校教育において交流や共同学習の機会を設けることが規定されています。教育委員会が主体となり、各学校で様々な交流や共同学習が行われ、障がい者理解の推進が図られています。また、「ユニバーサルデザイン2020行動計画」に基づき、「心のバリアフリー学習推進会議」が設置され、交流や共同学習の推進方策についての提言がまとめられています。 地域住民への広報・啓発活動も行われており、社会教育施設や精神保健福祉センターでは、障がいのある人に対する理解を深めるための学習活動や知識の普及・啓発が行われています。これらの取り組みを通じて、障がい者への理解が広がり、共生社会の実現に向けた一助となっています。 ボランティア活動の推進 学校におけるボランティア教育では、学習指導要領に基づき、道徳や総合的な学習の時間などで思いやりの心や助け合いに関する指導やボランティア活動の充実を図っています。特に高等学校では、生徒が行うボランティア活動などの学校外での学修が認められ、単位として認定される場合もあります。 地域福祉等ボランティア活動の促進に向けて、内閣府では「地域コアリーダープログラム」を実施し、共生社会の実現に向けた人材育成を行っています。また、障がい者関連分野では、国内外での青年の交流やリーダー育成を促進しています。 公共サービス従事者等に対する障がい者理解の促進 公共サービス従事者等に対する障がい者理解の促進では、警察や刑務所、更生保護官署、法務省の人権擁護機関などで障がい者理解の研修や教育が行われています。警察学校や矯正研修所では、障がいのある人への配慮やコミュニケーション方法などについての研修が実施され、社会福祉施設での体験実習も行われています。 法務省では、国家公務員や地方自治体職員を対象にした研修が行われ、障がい者に関する理解と認識の向上が図られています。また、日本司法支援センターでは、障がい者支援の知識を持つ担当職員が研修を通じて全国の職員に知識を伝え、利用者の立場を理解した適切な対応が行われるよう支援しています。 障がい者差別解消法の制定経緯と概要 障がい者差別解消法の制定経緯 障がい者の権利を保障するために、国際的な取り組みとして「障がい者の権利に関する条約」が採択され、日本も2007年に署名し、2014年に批准しました。これに基づき、障がい者基本法が改正され、差別の禁止が規定されました。その後、障がい者差別解消法が2013年に成立し、2016年に施行されました。 障がい者差別解消法の概要 (1)対象となる障がい者 身体障がい、知的障がい、精神障がい(発達障がいを含む)など、障がいによって日常生活や社会生活に制限を受ける者が対象です。障がい者手帳の所持者に限定されず、広範な障がい者が含まれます。 (2)対象となる事業者及び分野 行政機関や事業者が対象で、商業や非営利活動など様々な分野が含まれます。特に教育、医療、福祉、公共交通、雇用など、障がい者の自立と社会参加に関わる分野が重視されています。 (3)不当な差別的取扱いの禁止 障がいを理由とした財・サービスの拒否や条件付けなどは不当な差別とされ、法律で禁止されています。ただし、客観的に正当な理由がある場合は例外とされます。 障がい者差別解消法は、障がい者の権利を保障し、差別をなくすための具体的な措置を講じることで、社会の多様性と包摂性を実現するための重要な法律です。 (4)合理的配慮の提供 障がい者や関係者から配慮を求められた場合、負担が過重でない範囲で、社会的障壁を取り除くための必要かつ合理的な配慮を行います。負担の有無は、事案ごとに具体的に判断され、事務・事業の影響や実現可能性、費用などを総合的に考慮します。ただし、行政機関には義務が課される一方で、事業者には努力義務があります。 (5)環境の整備 公共施設や交通機関のバリアフリー化、サービス・介助者の提供、情報アクセシビリティの向上など、不特定多数の障がい者を対象とする事前的改善措置を行います。これには、ハード面だけでなく、職員の研修などのソフト面の対応も含まれます。 (6)障がい者差別解消法 「障がいを理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」を定め、行政機関等は対応要領を定めます。これに加え、各主務大臣は対応指針を定め、事業者が適切に対応するための指針を提供しています。 障がい者差別解消法 内閣府では、関係省庁や地方公共団体、障がい者団体などから障がい者差別解消法に基づく合理的配慮の提供や環境の整備に関する事例を収集し、「合理的配慮の提供等事例集」としてまとめています。 障がい者差別解消法に基づき、地域協議会の設置が促進されています。地域協議会は、相談事例の共有や協議を通じて、事案解決や類似事案の発生防止を図るためのネットワークです。未設置の地域に対しては、有識者をアドバイザーとして派遣するなどの支援が行われています。 地域の障がいのある人や関係者の意見を広く聴取 地域フォーラムが開催され、地域の障がいのある人や関係者の意見を広く聴取し、障がい者差別解消法の円滑な施行を目指し、地域における取り組みの促進と気運の醸成を図っています。 事業者における障がい者差別解消に向けた取り組みが期待されますが、必要に応じて主務大臣や地方公共団体の長が、事業者に対し報告を求めたり、助言・指導・勧告を行ったりすることができます。 2020年東京オリンピック・パラリンピックの基本方針 2015年に閣議決定された「2020年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会の準備及び運営に関する施策の推進を図るための基本方針」では、東京大会を契機に、障がいの有無にかかわらず、相互に人格と個性を尊重し支え合う「心のバリアフリー」を推進し、ユニバーサルデザインの街づくりを進めることが位置づけられました。その基本方針に基づき、2017年には「ユニバーサルデザイン2020行動計画」が決定されました。 行動計画 行動計画では、以下の2つの観点から具体的な取組が行われています。 「心のバリアフリー」の推進:障がいのある人への社会的障壁を取り除く社会の責務を理解し、差別をなくし、異なる条件を持つ他者とコミュニケーションを取る力を養い、共感する力を培うことが重要視されています。 ユニバーサルデザインの街づくり:東京大会に向けたバリアフリー化と全国各地でのユニバーサルデザインの推進が行われ、幅広い施策がとられています。 共生社会を実現するために必要な取り組み 2020年パラリンピック大会まで1000日を切った2018年1月に、「ユニバーサルデザイン2020関係閣僚会議(第2回)」が開催されました。この会議では、ユニバーサルデザインを推進する上での重要な要素である「心」と「街」の両分野における取り組みが共有され、更なる施策の進展が図られました。特に、共生社会を実現するために必要な取り組みの加速化が確認されました。 まとめ 障がい者週間や関連する取り組みは、障がいのある人々と社会全体の理解を深め、共生社会の実現に向けた重要な一歩となっています。これらの活動を通じて、社会の多様性と包摂性を促進し、障がい者の活躍と尊重を推進していくことが期待されます。障がい者週間を通じて展開されるイベントや関連行事は、多様な人々に障がい者とのふれあいや理解を深める機会を提供し、その結果、社会全体がより包括的かつ温かい場所となることが期待されます。 参考 第2章 障がいのある人に対する理解を深めるための基盤づくり|内閣府 -
どんな種類の障がいがあるの?障がいの多様性:身体障がい、知的障がい、精神障がい、発達障がい 知っておきたい基礎知識!
障がいは主に「身体障がい」「知的障がい」「精神障がい」の3つに大別される 障がいとは、障がい者基本法によれば、「身体障がい、知的障がい、精神障がいがあるため、継続的に日常生活や社会生活において相当な制限を受ける者」を指します。この定義に基づくと、障がいは主に「身体障がい」「知的障がい」「精神障がい」の3つに大別されます。 身体障がいは、身体の一部に損傷や機能の制限があり、日常生活に支障をきたすものです。知的障がいは、認知能力や学習能力に問題があり、社会参加や自立が難しい状態を指します。精神障がいは、心の健康に関連する障がいであり、感情や行動の制御が難しくなることがあります。これらの障がいは、個々の人の状況や程度によって異なり、支援や配慮が必要とされる場合があります。 身体障がい 身体障がいとは、先天的な要因や病気、事故などにより身体機能に制限が生じる障がいのことです。身体障がい者福祉法では、5つの主要な種類に分類されています。 視覚障がい 視覚障がい者は、視力に関する問題によって日常生活に様々な困難を抱えます。例えば、移動時には安全なルートの確保や交通手段の利用に課題が生じます。読書や書類の理解、情報の収集、デジタル機器の操作なども困難を伴います。 また、視覚障がいによって生じる社会的孤立や心理的なストレスも考慮する必要があります。支援としては、点字や音声案内、拡大印刷物、音声合成技術などの利用が挙げられます。 聴覚障がい 聴覚障がい者は、コミュニケーションや情報収集において困難を経験します。日常生活では、会話や講義、公共のアナウンスなどが聞き取りにくい場合があります。特に、背景雑音のある環境や複数の話者がいる場面での情報の把握が難しくなります。聴覚障がい者への支援策としては、手話や筆談、口話言語訓練、聴覚補助装置の利用などがあります。 音声・言語機能またはそしゃく機能障がい 音声・言語機能の障がいやそしゃく機能障がいを持つ人々は、コミュニケーションや食事において日常生活におけるさまざまな困難に直面します。言葉の理解や発声が難しいため、コミュニケーションの円滑な進行が難しくなります。 また、そしゃく機能障がいを持つ人々は、食事や嚥下に関する問題により、栄養摂取や健康管理に支障を来すことがあります。これらの障がいへの対応としては、手話や文字によるコミュニケーション支援、食事内容や嚥下訓練の改善などが挙げられます。 肢体不自由 肢体不自由は、四肢や体幹の運動機能に障がいがある状態を指します。この障がいにより、日常生活において様々な困難が生じます。例えば、移動や身の回りの世話、衣服の着脱、食事の準備や摂取、さらには仕事や学校などの社会的な活動にも影響を及ぼします。肢体不自由の原因は多岐にわたります。 先天的な障がい、遺伝的な要因、疾患、事故や外傷など、さまざまな要因が考えられます。また、脳や脊髄の損傷、筋肉や関節の異常、先天性の四肢の発育不全なども肢体不自由の原因となります。リハビリテーションや適切な医療、補助具の利用など、個々の状況に応じた支援が重要です。 内部障がい 内部障がいは、心臓や腎臓、免疫機能などの内部器官の機能に障がいがある状態を指します。これらの障がいにより、全体的な体力低下や疲労感が生じます。心臓の機能障がいによる場合、身体のどこからでも不規則な動悸や息切れが起こることがあります。 腎臓の機能障がいでは、体内の余分な水分や老廃物が排泄されず、浮腫や高血圧などの症状が現れることがあります。免疫機能障がいによる場合、体が感染症に対して充分な抵抗力を持たず、さまざまな健康問題が生じる可能性があります。 これらの障がいの原因は、様々なものが考えられます。心臓や腎臓の機能障がいは、疾患や生活習慣によるものが主な原因です。免疫機能障がいは、遺伝的な要因や環境要因、または病気や治療によるものがあります。内部障がいは、適切な治療や管理が不可欠であり、それによって生活の質を改善することが可能です。 知的障がい 知的障がいの特徴を掘り下げると、以下のような点が挙げられます。 知的発達の遅れや制限 知的障がいは、一般的な知的発達の遅れや制限が主な特徴です。これは、認知能力、言語能力、学習能力、社会的な適応能力などに影響を与えます。 この遅れや制限は、人々が情報を処理し、問題を解決し、日常生活のスキルを獲得する能力に影響を及ぼします。 知的機能と適応機能の評価 個々の知的障がいの程度は、知的機能と適応機能のレベルに基づいて評価されます。知的機能は、知的テストによって測定されます。これには、言語、数学、記憶、問題解決能力などが含まれます。 適応機能は、日常生活や社会生活における能力を示します。これには、自己ケア、コミュニケーション、社会的相互作用、職業訓練などが含まれます。 年齢に応じて、個人の能力や成長を評価し、必要な支援やサービスを提供するために、定期的な評価が行われます。 このような詳細な評価を通じて、個々のニーズや能力に合わせた適切な支援が提供され、知的障がいを持つ人々が最大限の可能性を引き出すことができるようになります。 日常生活における困難 影響について更に掘り下げると、知的障がいが日常生活や教育、雇用に及ぼす具体的な影響を理解することができます。 日常タスクの理解と実行 知的障がいを持つ人々は、日常のタスクやルーチンを理解し、実行することに困難を抱えることがあります。これには、自己ケア、家事、買い物、交通手段の利用などが含まれます。 コミュニケーションの困難 コミュニケーションは、言語能力や社会的な適応能力が必要なため、知的障がいを持つ人々にとって困難な場合があります。言葉の理解や表現、会話の流れや社会的なルールの理解に問題を抱えることがあります。 教育や雇用の制約 学習の制約 知的障がいを持つ人々は、学習や教育においても障がいを抱えることがあります。特別な教育プログラムや支援が必要となることがあります。 雇用の制約 一部の人々は、知的障がいを克服し、職場で十分な支援を受けることで、一定の成果を達成することができます。しかし、適切な教育や雇用の機会へのアクセスが難しい場合があります。また、雇用先での適切な支援や配慮がないと、適切な役割を果たすことが難しいこともあります。 これらの影響を考慮することで、知的障がいを持つ人々に対する支援やサービスが改善され、彼らがより満足度の高い生活を送ることができるようになります。 社会的な関係の構築と維持 社会的な関係と自立について更に掘り下げると、以下の点が挙げられます。 コミュニケーションの障がい 知的障がいを持つ人々は、言語理解や表現の障がいから、コミュニケーションにおいて困難を抱えることがあります。これにより、友情や家族関係の構築や維持に影響を与えることがあります。適切なコミュニケーション手段や支援が必要です。 適応能力の制限 社会的な状況や関係に対する適応能力の制限も、知的障がいを持つ人々に影響を与えます。新しい環境や社会的なイベントに対する適応が難しく、社会的な孤立や不安感を引き起こすことがあります。 自立生活の目標の達成 生活スキルの向上 自立生活を送るためには、生活スキルの向上が不可欠です。これには、日常生活の基本的なスキル(料理、清掃、買い物など)や社会生活に必要なスキル(コミュニケーション、交渉、問題解決など)の獲得が含まれます。 適切な住居の提供 自立生活を支援するためには、適切な住居の提供が必要です。これには、安全で快適な住環境や必要なサポートサービスへのアクセスが含まれます。 職業訓練 自立生活を実現するためには、適切な職業訓練や就労支援が必要です。これにより、自己価値感や生活の質が向上し、社会参加が促進されます。 これらの支援が提供されることで、知的障がいを持つ人々が社会的な関係を築き、自立的かつ充実した生活を送ることができるようになります。 精神障がい(発達障がいを含む) 精神障がいは、感情や思考、行動に変化が現れ、日常生活に支障をきたす障がいを指します。その中でも、統合失調症や気分障がいはよく知られた代表的な例です。 統合失調症 統合失調症は、現実感覚の歪みや幻覚、妄想などの症状が特徴的です。これにより、患者は日常生活において困難を経験し、社会的な関係や職業生活に支障をきたすことがあります。例えば、幻聴や被害妄想によって周囲とのコミュニケーションが困難になることがあります。 発症の原因は、遺伝的な要因や生活環境、神経化学の変化などが関与すると考えられています。また、ストレスやトラウマも発症に影響を与えることがあります。心理的な治療や薬物療法が一般的な治療法ですが、個々の症状や経過に応じてアプローチが異なります。 気分障がい 気分障がいには、うつ病や双極性障がいなどが含まれます。うつ病では、患者は長期間にわたって抑うつ状態が続きます。双極性障がいでは、患者は抑うつと興奮の状態が交互に現れます。これらの気分変動により、患者は日常生活において様々な問題を抱えることがあります。 気分障がいの原因は、脳の神経化学の変化や遺伝的な要因、ストレスなどが関与します。特定の生活イベントや季節の変化も発症に影響を与えることがあります。治療法としては、薬物療法や心理療法、生活習慣の改善が行われますが、個々の症状や重症度によって治療方針が異なります。 これらの精神障がいは、個々の症状や影響が異なるため、適切な診断と治療が重要です。また、ストレスへの脆弱性を持つ人々が発症しやすいとされるため、心理的なサポートや適切なケアが必要です。 発達障がい 発達障がいは、脳の発達に関する先天的な異常によって引き起こされるものであり、その特性は個々の障がいによって異なります。ここでは、よく知られている発達障がいのいくつかを詳しく見てみましょう。 自閉スペクトラム症(ASD) 自閉スペクトラム症は、社会的な相互作用やコミュニケーション、興味や行動における制限されたパターンなどが特徴です。例えば、他人との関わりを避ける傾向や、反復的な行動が見られることがあります。 ASDは、生涯にわたって持続する障がいであり、個々の症状や重症度は大きく異なります。多くの場合、早期の介入や適切な支援が必要です。 注意欠陥・多動症(ADHD) ADHDは、注意力の欠如、衝動性、多動性などが特徴的な障がいです。これにより、学校や職場での集中力や組織力が低下し、日常生活に支障をきたすことがあります。 環境要因や遺伝的な要因が発症に関与する可能性があります。多くの場合、行動療法や薬物療法などが症状の管理に用いられます。 学習障がい(LD) 学習障がいは、読み書きや計算などの基本的な学習スキルの獲得に困難を抱える障がいです。これにより、学業成績や学習へのモチベーションが低下し、自己価値感に影響を与えることがあります。 環境要因や遺伝的な要因が発症に関与する可能性があります。個々のニーズに応じた教育的な支援や学習療法が重要です。 これらの発達障がいは、個々の特性や症状に応じて様々な支援や介入が必要です。早期の診断と適切な支援を提供することで、個々の能力を最大限に引き出し、日常生活における成功や満足度を高めることができます。 特性や影響は異なるが共通して理解される必要がある これらの障がいには、個々の特性や影響が異なりますが、共通して理解される必要があります。支援やケアの提供においては、その人のニーズや特性を十分に理解し、個別化されたアプローチが重要です。また、二次障がいを引き起こす可能性も考慮する必要があります。 まとめ 障がいは、身体的な制約から知的な遅れ、精神的な変化、発達上の課題まで、様々な形で現れます。それぞれの障がいは、個々の人の生活や関係に異なる影響を与えますが、理解と支援を通じて、誰もが充実した生活を送る機会を得ることができます。 参考 どんな種類の障がいがあるの? 知っておきたい基礎知識をご紹介|ワークリア
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みんなの障がい動画は、障がいに関する基礎知識などを、動画でわかりやすくお伝えしていきます。
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【大人の障がい】離人症とは?動画で詳しく解説!
『大人の障がい動画』では、様々な障がいに焦点を当て、理解と共感を促進していきます。 今回の動画では、離人症について詳しく紹介します。 離人症とは 離人症とは、解離性障害の一種であり、自分の意識や体が自分の物ではないように感じたり、物事がすべて現実ではないように感じたりする状態のことです。 離人症は人口の約2%に発生するといわれており、男女の割合は関係なく、10代から20代の発症が最も多いです。強いストレスや不安、激しい疲労、うつ病など精神疾患、違法薬物の使用などから引き起こされます。 脳科学の観点では、脳内のドーパミン物質の分泌が少ないと、離人症の症状につながりやすくなることがわかっています。離人症の症状は数時間で治まるものから、数日、数か月、重い場合は数十年にもわたって悩まされる方もいます。 主な症状 離人症の主な症状は「外界の見え方の変化」「感情の喪失」「自分の体への意識の変化」の3つです。 「外界の見え方の変化」の症状の現れ方は人それぞれであり、物や人が色あせて見える、物や人がぼやけて見える、ベールのように薄い膜ごしに物や人を見ているように感じる、夢を見ているように感じる、などです。 「感情の変化」は、感情が無くなったように思い、何かをしたりされたりしても、その意味をとらえることができなくなるという症状です。「自分の体への意識の変化」は、自分の体が自分の物ではなく、ロボットのように感じる、身体がまひしているように思う、自分の体の大きさや形がちがって感じる、自分のことを遠くから観察しているように感じる、などの症状があります。 これらの症状がありながらも、離人症の患者は「自分はおかしい状態だ」と気づくことができます。意識の混濁などはなく、妄想と現実の区別がしっかりついていることが、離人症の大きな特徴です。 治療方法について 離人症の根本的な治療法は確立されていません。そのため、精神科や心療内科では、「原因の除去」「心理療法」「薬物治療」などをおこない、離人症の症状を緩和することを目的とします。 強いストレスが原因の場合、ストレスを感じているものや環境から離れる、または問題の解決法を見つけることで、離人症の症状の改善を目指します。また、うつ病などその他の精神疾患から起こっているときは、うつ病など精神疾患の治療をおこないます。 心理療法には、認知行動療法や曝露療法などが用いられます。認知行動療法とは、物事のとらえ方を変えて、ストレスへの耐性を高める療法です。曝露療法とは、不安を感じる場面をあえて体験し、不安感に慣れていく療法です。 まずはカウンセラーと一緒に、不安を感じる場面を小さなことから体験し、少しずつ不安感をへらしていきます。しかし、離人症が心理療法で改善されることはむずかしく、多くは薬物治療が有効になります。薬物治療は、抗不安薬や抗うつ薬が主に使われます。" -
【大人の障がい】睡眠障がいとは?動画で詳しく解説!
『大人の障がい動画』では、様々な障がいに焦点を当て、理解と共感を促進していきます。 今回の動画では、睡眠障がいについて詳しく紹介します。 睡眠障害とは "睡眠障害とは、睡眠をとるときに問題があり、からだに適した睡眠をとることができない状態のことです。統計によると、5人に1人が睡眠障害に悩まされています。 睡眠障害には複数の種類があります。代表的なものは、「不眠症」「過眠症」「概日リズム障害」「睡眠時呼吸障害」です。 そのほか、「むずむず脚症候群」「周期性四肢運動障害」「睡眠時随伴症」や、身体や精神疾患が引き起こす睡眠障害があります。睡眠障害の原因は、「ストレス」「精神疾患」「加齢」「体型」「不規則な生活習慣」「音など環境」「薬の副作用」「カフェインやアルコール」など、多くの原因があり、原因ごとに症状が変わります。" 主な症状 "主な症状は、「入眠困難」「中途覚醒」「早期覚醒」「過眠」の4つです。布団に入ってから1時間以上眠りにつけない「入眠困難」夜中に何度も起きてしまう「中途覚醒」、予定より早く起き、その後眠ることができない「早期覚醒」 睡眠時間は十分なのに熟睡した感じがしない、日中に激しい眠気が生じる「過眠」以上、4つの症状から、「頭痛やめまい」「適切な時間に起きられない」「集中力の低下」「疲れやすくなる」といった体の不調が起こります。" 治療方法について "睡眠障害は基本的に内科に受診し、治療を始めます。しかし、睡眠障害の原因がわかっている場合は、原因に合った診療科を受診しましょう。 ストレスが原因の場合は、精神科や心療内科に受診します。睡眠時の呼吸が原因だと思う場合は、呼吸器科内科が合っています。睡眠中に足がつる、手足がむずむずする、など身体的な問題で睡眠ができなくなっている場合は、脳神経内科の受診をすすめます。 睡眠障害の治療は、症状によって異なりますが、睡眠の質を高める、または睡眠を妨げる原因に作用する薬を使う「薬物治療」、医師による睡眠・生活習慣の見直し、照明を使って体内時計を整える「高照度光療法」などが主に用いられます。" -
【大人の障がい】適応障がいとは?動画で詳しく解説!
大人の障がい「適応障がい」って? 『大人の障がい動画』では、様々な障がいに焦点を当て、理解と共感を促進していきます。 今回の動画では、適応障がいについて詳しく紹介します。 適応障害とは "適応障害とは、特定の環境や状況に慣れることができず、気分や行動に重度の障害が起こることです。転勤や転職、結婚、引っ越し、新しい人間関係など、環境が大きく変わるときに発症しやすいです。 適応障害の原因はストレスです。ストレスになることがあってから3か月以内に症状があらわれた場合は、適応障害の疑いがあります。また、ストレスの感じ方は人それぞれのため、同じ環境の変化があっても、適応障害になる人と、ならない人がいます。そのため、本人の内面が適応障害の要因になることも考えられます。 適応障害になりやすいとされている人は、「ストレスが溜まっていることに気づかない」「心配性」「繊細で傷つきやすい」「まじめで几帳面」「完璧主義」などの特徴があります。" 主な症状 "症状は「身体」と「情緒」の2つに現れます。「身体」に現れる症状は、「眠れなくなる・眠りが浅くなる」「食欲不振」「涙が出やすくなる」「のどに異物感がある」「過呼吸」「動悸が激しくなる」「肩こり」「腰痛」などがあります。 「情緒」に現れる症状は、「イライラしやすくなる」「緊張や不安が続く」「むなしい気持ちになる」「集中力が下がる」「物事に敏感に反応する」などです。 このような症状から、「無断遅刻・無断欠勤を繰り返す」「ひきこもりになる」「暴飲暴食」「ギャンブルやアルコールに依存する」など、仕事だけでなく、健康生活にも支障をきたしてしまいます。" 治療方法について "適応障害の治療方法は、「環境調整」「心理療法」「薬物療法」の3つです。適応障害は、ストレスの原因がなくなると約6カ月以内に症状がなくなることが、大きな特徴です。そのため、適応障害の治療には、まずストレスの原因をなくす「環境調整」がよくおこなわれます。 たとえば、ストレスの要因が「職場」のときは、「休職する」「異動・役職の変更」「転職」になります。心理療法は、「認知行動療法」や「問題解決療法」が使われます。認知行動療法とは、物事のとらえ方や考え方のゆがみを治し、ストレスにたいして適切な行動がとれるようにして、本人の適応力を高める療法です。 問題解決療法は、本人が抱えている問題や症状に最も有効な解決策を見つけ出す療法です。薬物療法は、適応障害の症状が重いときに、その症状を緩和するために使用されます。薬物療法で適応障害が治るわけではないので、薬の使用には慎重になる必要があります。" -
【大人の障がい】DCDとは?動画で詳しく解説!
大人の障がい「DCD」って? 『大人の障がい動画』では、様々な障がいに焦点を当て、理解と共感を促進していきます。 今回の動画では、DCDについて詳しく紹介します。 DCDとは? "ディーシーディーとは、「発達性協調運動障害」といい、身体に問題がないにも関わらず、協調運動をおこなうことに困難がある障害です。協調運動とは、手や足、目など複数の部位を動かす運動のことです。 たとえば、「歩く」は、足を交互に前に出すという複数の動作があります。「字を書く」は「ノートを見る」「鉛筆をもつ」「動かす」、「縄跳び」は「縄を回す」「飛ぶ」など、複数の部位を動します。 このように全身運動や、手先を動かすことに困難が生じるので、日常生活や仕事にも支障をきたすケースがあります。ディーシーディーは小脳の機能不全によって起こることがわかっています。生まれつき脳機能に偏りがある「発達障害」と併発し、「ADHD」や「ASD」とともに、ディーシーディーの症状が見られることが多くあります。 そのほか、「ビタミンE欠乏症」や「熱中症」で小脳の機能に異常が起きて、ディーシーディーの症状が現れるケースもあります。ディーシーディーの発症頻度は6~10%とされており、とくに「男児」がディーシーディーになりやすいと考えられています。" 主な症状 主な症状は、運動に関する感覚に障害が起こること、細かな動作や全身運動に重い困難が生じることです。日常生活では、「字をすらすらと書けない」「ひもを結ぶことに時間がかかる」「箸を正しく動かせない」などがあります。また、ディーシーディーは運動に関する「平衡感覚」や「固有感覚」にも影響します。 平衡感覚とは、身体のバランスを保つ感覚のことです。平衡感覚に障害があると、「まっすぐ歩けない」「姿勢が崩れやすい」「めまいがよく起こる」などの症状があります。固有感覚とは、自分の体の動きや位置の把握、力に関わる感覚のことです。 固有感覚に障害があると、「よく物を落とす」「転びやすくなる」「力加減ができない」などがあり、自分の思うとおりに体を動かせにくくなります。仕事では、「化粧ができない」「自動車を運転できない」「料理ができない」「メモをとれない」「パソコンのタイピングができない」など、広く困難が生じます。 ディーシーディーは「不器用」「重度の運動音痴」だと思われやすいので、障害に気づかないと、自信をなくしたり、いじめの対象になったりして、ほかの精神疾患を引き起こすこともあります。" 治療方法について ディーシーディーの根本的な治療はないため、「理学療法」「作業療法」「感覚統合療法」などの3つを組み合わせて症状を改善します。理学療法士や作業療法士の支援を受けながら、感覚を意識ながら体を動かすトレーニングをします。 指先の細かい作業が苦手な方は、細かな作業に集中して訓練し、困難をへらしていくことを目標にします。 -
【大人の障がい】LD(学習障がい)とは?動画で詳しく解説!
大人の障がい LD(学習障がい)って? 『大人の障がい動画』では、様々な障がいに焦点を当て、理解と共感を促進していきます。 今回の動画では、LD(学習障がい)について詳しく紹介します。 LDとは LDとは、学習障害と呼ばれ、「読み書き」や「計算・推論」に困難が見られる状態のことをいいます。LDは発達障害の一種であり、生まれつき脳機能に偏りがあることから症状が現れます。しかし、子どものころにLDがまわりに気づかれず、大人になってからLDが発覚する「大人のLD」があります。 「大人のLD」は子どものLDより複雑であり、二次障害を発しているケースが多く見られます。二次障害とは、LDのような発達障害が原因で、不安障害や睡眠障害など他の障害が引き起こされることです。LDは見た目からすぐわかる障害ではないので、まわりからは怠けていると評価されたり、勉強や仕事ができないため自信をなくしたりして、働くことをやめてしまう方もいます。 主な症状 LDの主な症状は、読字障害(ディスレクシア)、書字表出障害(ディスグラフィア)、算数障害(ディスカリキュリア)の3つがあります。読字障害は、読むことに困難がある障害です。「読むことに多くの時間がかかる」「文末を読み違える」「文や行を読み飛ばす」など、読むことに困難が見られます。 書字表出障害は、書くことに困難がある障害です。「鏡文字を書いてしまう」「似ている文字の判別ができない」「書き写すことができない」など、書くことに困難が見られます。 算数障害は、計算や推論することに困難がある障害です。「数を数えることが苦手」「時計を見て時間を知ることがむずかしい」「数を使って推論することがむずかしい」など、数字に関することで困難が見られます。このような症状が6カ月以上続くと、LDの疑いがあると診断されます。 治療方法について 学習障害を根本的に治療する方法は現在ありません。自分やまわりの環境を整えて、学習障害による困りごとを減らす方法になります。 読字障害の場合は、「資料には文章だけではなく図や画像をつかう」「読み上げアプリを使用する」 書字障害の場合は、「メモではなく写真を撮って記録する」「ボイスレコーダーを使う」「指示をあらかじめ文書でもらう」 算数障害の場合は、「電卓を使用する」「自分で計算をおこなうときは合っているかどうかを確認する」 このように、便利なアプリやツールの使用と、周囲の理解・協力が必要になります。自分の苦手な仕事を把握し、アプリやツールの利用の許可をとるなど、周囲へ協力を求めましょう。 -
【大人の障がい】ADHDとは?動画で詳しく解説!
大人の障がい ADHD自閉スペクトラムって? 『大人の障がい動画』では、様々な障がいに焦点を当て、理解と共感を促進していきます。 今回の動画では、ADHDについて詳しく紹介します。 ADHDとは? ADHDとは、発達障害の一つであり、生まれつき脳機能に偏りがある障害のことです。 生まれつきとされていますが、近年では「大人のADHD」と呼ばれており、大人になってからADHDの症状で病院を受診する方が増えています。 とくにADHDは近年、最も急増している発達障害です。芸能人がADHDであることを告白するなど、認知度も高くなっています。ADHDは生まれつきのため、直接的な原因は明らかになっていません。しかし、睡眠障害や愛着障害、虐待など生育環境により、ADHDと同じ症状が引き起こされることがわかっています。 主な症状 ADHDの主な症状は、「不注意」「多動性」「衝動性」の三つがあります。 「不注意」があると、集中力を維持することができず、「人の話を聞いていないように見られる」「ケアレスミスが多くなる」「大事な会議に事前連絡なしに遅刻または欠席する」など、大きく仕事に影響します。 「多動性」があると、じっとしていることができず、「会議中に席を立ってしまう」「人の話を遮って一方的に話してしまう」「集団のペースに合わせて仕事することができない」などが見られます。 「衝動性」があると、我慢することができず、「思ったことを衝動的に言ってしまう」「順番を守れない」「金銭管理ができない」などが見られます。 ADHDの症状の現れ方は三つあります。 「不注意」が強く現れる「不注意優勢型」 「多動性」や「衝動性」が強く現れる「多動性・衝動性優勢型」 「不注意」「多動性」「衝動性」すべての症状が見られる「混合型」の三つです。 治療方法について ADHDを根本的に治療する方法はありません。ADHDの治療は症状を改善することが目的になります。治療法として使われているのは、「心理療法」「環境調整」「薬物療法」の3つです。心理療法は、認知行動療法がよく用いられます。 認知行動療法とは、物事の受け止め方や考え方を整えて、その場面にふさわしい行動がとれるように変えていく療法です。環境調整とは、ADHDの特性による困りごとをへらすために、自分やまわりの環境を整えることです。 集中力が持続しない場合は、気が散る原因をなくすために「スマホや気が散るものは目に入らないところに置く」「耳栓などを使用して雑音をへらす」「間仕切りを使う」 忘れっぽく、ミスが起こる場合は、「メモをとって身につける」「カレンダー機能やリマインダー機能を使う」「タスク管理アプリを使う」 衝動性が強く、衝動買いをよくしてしまう方は、「買い物に行く前に必要なものをメモにとり、そのメモにあるものを買う」ことを徹底しましょう。 症状が重い場合は、医師の判断で薬物療法が使われます。脳機能を整える薬を服用し、不注意や衝動性、多動性を減らすことができます。ただし、薬の服用は依存性が生じることがあるので、医師とよく相談して決めましょう。 -
【大人の障がい】ASD(自閉スペクトラム症)とは?動画で詳しく解説!
大人の障がい ASD 自閉スペクトラム症って? 『大人の障がい動画』では、様々な障がいに焦点を当て、理解と共感を促進していきます。 今回の動画では、ASD(自閉症スペクトラム障害)について詳しく紹介します。 ASDとは? ASDとは、発達障害の一つであり、自閉スペクトラム症といいます。発達障害は生まれつき脳機能に偏りがあり、得意な分野と苦手な分野に大きな差が生じるのが一つの特徴です。生まれつきといわれていますが、現在は「大人の発達障害」という言葉もあり、大人になってからASDの症状で病院を受診する方が増えています。 ASDは、コミュニケーション障害や、非常に強いこだわりが見られたりします。人によっては「感覚過敏」という特性もあり、聴覚や視覚などが過敏に反応して、通常の生活を送れない方もいます。大人のASDの原因は明らかになっていません。生活習慣の乱れや過剰なストレスが、ASDと似た症状を引き起こすことはあります。 主な症状 主な症状は「コミュニケーションの障害」と「非常に強いこだわり」です。コミュニケーションの障害は、「相手との距離がわからない」「あいまいなことがわからない」「冗談が理解できない」などがあります。あいまいなことがわからないので、「少し」「しばらく」という言葉や、空気を読むことがむずかしいです。 コミュニケーションが仕事で必要になってくると、指示が伝わらなかったり、暗黙のルールを守れなかったりして、仕事に支障をきたしてしまいます。「非常に強いこだわり」には、「同じ行動を繰り返す」「集中するとまわりが見えなくなる」「物事をおこなう順番にルールがある」などがあります。 臨機応変な対応ができないため、集団行動が苦手である方が多いです。強いこだわりにより、同じものばかり食べる「偏食」になったり、聴覚や視覚などの五感が敏感になり、外を歩けなくなり、健康生活そのものに影響をおよぼすケースがあります。 治療方法について ASDなど発達障害は生まれつきのものとされており、根本的な治療はありません。ASDによる困りごとを改善するために、「環境調整」「心理療法」「薬物療法」の3つをおこないます。 環境調整とは、自分の得意・苦手を知り、苦手なことが起こらないように環境を整えることです。「苦手なことが起こる状況を避ける」「ASDの特性を家族や周囲に伝えて配慮をお願いする」などがあります。ASDの心理療法には「認知行動療法」がよく使われます。認知行動療法は、物事にたいしての感じ方や考え方を改善し、ストレスをへらしていく方法です。薬物療法は、ASDを根本的に治すものではなく、ASDによる困りごとを薬で改善するものになります。 ASDにより不安障害や睡眠障害が起こっている場合は、不安障害や睡眠障害の治療を目的に薬を使用します。あくまで薬は最後の手段であり、基本的な治療は「環境調整」と「心理療法」が中心です。
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