自閉スペクトラム症の息子と共に歩むプロバスケ選手 岡田優介さんの家族と未来への思い
プロバスケットボール選手 岡田優介さん(香川ファイブアローズ所属)には、2人の子どもがいて、第一子・朔玖(さく)くん(5歳)は、自閉スペクトラム症と知的障がいと診断されています。岡田優介さんは自身のインスタで朔玖くんのことをたびたびアップしていますが、そこには親としても思いが…。岡田優介さんに、朔玖くんとの日々や第2の人生についてお話をうかがいました。
多様な子がいることを知ってほしくてインスタで息子の写真を公開
岡田優介さん(以下、岡田さん):自閉スペクトラム症の人は約100人に1人と言われています。主な特性は、こだわりの強さやコミュニケーションが困難なことなどです。自閉スペクトラム症は、発達障がいの一種です。まれな障がいではないし、こういう子もいるということを多くの人に知ってほしくて、自分のインスタに朔玖の運動会や誕生日、公園で遊んだときの写真などをアップしたりしています。
朔玖くんの姿を見て、癒される人も
岡田さん:インスタに寄せられるのは「朔玖くんの笑顔に癒されます!」「朔玖くんの元気な姿を見ると、私まで元気になれます」などのコメントです。
息子や娘には、将来、人の役に立つような大人になってほしいと考えています。人に感謝されるような大人になってほしいなと思います。朔玖は、5歳ですが言葉がなく「ママ」「パパ」も言えません。しかし朔玖を見て、癒されたり、元気になれる人もいます。幼いのに人の役に立っているんだなと思うと、うれしいです。
息子は環境が変わることが苦手で、旅行や外出は困難
岡田さん:自閉スペクトラム症の特性で、朔玖は環境が変わることが苦手です。そのため家族で旅行に行ったり、お出かけしたりすることは難しいのが現状です。先日も、娘が「テーマパークに行きたい!」と言うので、妻が娘だけを連れてテーマパークに遊びに行きました。朔玖はテーマパークなどに行くと、環境が変わるせいで激しくかんしゃくを起こしたりします。妻は「朔玖にとって外出は苦痛だし、周りの人にも迷惑になるから…」と言って、家族での外出には今のところ消極的ですね。慣れている場所だと安心するので近くの公園でもっぱら遊んでいます。
岡田さん:お出かけ先で困るのが外食です。偏食のため、外食だとうどんとフライドポテトぐらいしか選択肢がなくなってしまいます。バナナも好きなのですが、バナナ1つとっても、家でいつも食べるのと同じように出さないといけないんですね。輪切りにして出されたりすると「違う!」と言って食べられなくなってしまいまして。そのため外出は難しいのが現状です。
お出かけ先は、よく行くショッピングモールだと安心してくれる
岡田さん:娘と妻がテーマパークに行っているときなど、私と朔玖はショッピングモールに行って遊んでいます。よく行くショッピングモールは、慣れているので大丈夫なんです。朔玖は、自閉スペクトラム症の特性で、同じ行動を繰り返す傾向がありますが、階段の上り下りも楽しいようで、ご機嫌になります。周囲に配慮しながら、階段に飽きるまでそばにずっと付いて見守っていることもあります。こういう経験を通して私自身、待つことを学び寛容になった気がします。
朔玖くんが気づかせてくれた、第2の人生
岡田さん:支援が必要な子どもをもつママ・パパは、子どものことで毎日が精いっぱいです。ママ・パパ自身がどんなに心身ともに疲れていても、疲れを癒したり、リラックスできる場は少ないんですよね。親子で外出を楽しみたくても「周囲に迷惑をかけるから…」と家族で気軽に出かけられないというママ・パパもたくさんいると思います。
岡田さん:色々な事業を自分で経営していますが、今後は発達障がいや身体障がいの子どもをもつママ・パパが、気兼ねなく旅行に行けたり、心のサポートができるようなプロジェクトを展開できたらいいな…と考えています。
また、朔玖や朔玖のような子たちが輝ける場所を探してプロデュースしてあげたいです。こんなふうに考えられるようになったのは、朔玖がいるからですね。朔玖からは学ぶこと・教えられることが多いです。
岡田さんの幼少期から今まで
岡田さん:私がバスケを始めたのは、小学5年生のときです。兄の影響でバスケを始め、家の近くの公立中学校に通いバスケ部に入りました。けして強豪チームではなかったのですが、中学時代に東京都選抜メンバーに選ばれました。
岡田さん:高校は母の反対を押し切って、スポーツ推薦で土浦日本大学高等学校に進学しました。高校時代は、親元を離れての寮生活でした。勉強も得意な方ではあったので、スポーツだけではなく視野を広げて高校を探してほしかったようです。でも、バスケが大好きでしたし、ちょうど反抗期だったので、母の言うことは聞かなかったですね。
文武両道 学ぶのもスポーツも好きだった
岡田さん:子どものころから勉強は好きなほうでした。スポーツも好きでしたが、勉強ができる子たちとはスポーツ感覚でテストの点数を競い合ったりもしていました。新しいことを覚えたり、学んだりすることはワクワクして楽しいと思っていました。
大学生のときから5年かけて、公認会計士試験に合格
岡田さん:大学は青山学院大学に通っていたのですが、国際経済の勉強をしているうちに会計に興味を持ち、公認会計士の試験に挑戦しようと思いました。かなり勉強が必要で、5年かかりましたが公認会計士試験に合格することができました。この経験は、自分にとって大きな自信につながりました。
子どもたちにはいろいろなものに興味を持ってチャレンジしてほしい
岡田さん:自分のこれまでの経験から、息子や娘にはいろいろな経験をして、そこから好きなもの・夢中になれるものを見つけてほしいと思っています。
岡田さん:最初から「○○だけ!」と決めずに、いろいろなものに興味を持ってチャレンジし、視野を広げてほしいですね。スポーツ、勉強、なんでもいいので好きなものや気になるものはどんどんトライするするのが大事ですね。そうした経験があると、壁にぶつかったりしたときも柔軟な発想で乗り越えられる力になると思います。
岡田優介|プロバスケットボール選手
プロバスケ選手。香川ファイブアローズ所属。二児の父。2010年公認会計士試験に合格。バスケットボール選手として活躍しながら、監査実務、小さな会社を2社経営。バスケットボールをもっと広めたいという思いで子ども向けバスケットボールスクールを開校。
自閉スペクトラム症(ASD)と知的障がいについて
自閉スペクトラム症(ASD)とは
自閉スペクトラム症(ASD: Autism Spectrum Disorder)は、コミュニケーションや社会的相互作用に困難を伴う発達障がいの一種です。ASDは、症状の現れ方が非常に多様で、軽度の社会的困難を抱える人から、重度の知的障がいを伴う人まで幅広いスペクトラムがあります。ASDは、その症状によって大きく3つの特徴が挙げられます。
社会的コミュニケーションの困難さ
ASDの人々は、他者とのコミュニケーションや感情の共有、社会的なやりとりに難しさを感じることがあります。例えば、相手の気持ちを理解することや、適切な表現を選んでコミュニケーションをとることが難しい場合があります。また、会話中に話題が偏ってしまったり、目を合わせないといった特徴も見られることがあります。
限定された興味や反復行動
ASDのもう一つの特徴は、特定の興味や行動に強いこだわりを持つことです。特定の話題や趣味に没頭したり、同じ行動やルーチンを繰り返すことに安心感を覚える場合があります。環境の変化に対して敏感で、新しい状況に順応するのが苦手なこともあります。
感覚過敏または感覚鈍麻
感覚に対する反応が一般の人とは異なることも特徴です。音や光、触覚などに対して過敏になりやすく、特定の感覚に対して非常に強い不快感を示す場合があります。一方で、感覚が鈍くなり、刺激に対して反応が乏しいこともあります。
知的障がいとは
知的障がい(Intellectual Disability)は、知的機能と適応行動において生じる発達の遅れや障がいを指します。知的機能とは、学習や問題解決、論理的思考といった脳の働きを指し、適応行動は日常生活や社会的な状況に適応するための能力を指します。知的障がいのある人は、こうした分野での困難に直面することが多く、支援が必要です。
知的障がいは、知的能力の検査(IQテスト)を通じて評価されます。IQが70未満の場合、知的障がいと診断されることがありますが、それだけでなく、個人の日常生活や社会生活での適応能力も考慮されます。
ASDと知的障がいの関係
ASDの中には知的障がいを併発しているケースもあります。ASDを持つ人のうち、約30%が知的障がいを伴っているとされていますが、知的障がいの程度やASDの症状の重さには個人差があります。知的障がいを持つASDの人々は、特に学習や日常生活において多くの支援を必要とします。一方、知的能力が平均以上であっても社会的な適応に困難を抱える人もおり、その多様性がASDの特性を強く表しています。
ASDと知的障がいの診断
ASDや知的障がいの診断は、専門の医師や心理士による包括的な評価を通じて行われます。通常、発達の遅れや社会的な行動の困難さが見られた場合、親や教育機関、医療機関からの指摘を受け、適切な検査が行われます。診断には、行動観察、知能検査、社会的スキルやコミュニケーション能力の評価が含まれます。
ASDと知的障がいの治療と支援
ASDや知的障がいに対する治療法は、症状の改善や生活の質を向上させるための支援が中心です。ASDの人々には、言語療法や行動療法、感覚統合療法などが提供されることが多く、社会的スキルの向上を目指したサポートも行われます。また、知的障がいを持つ人には、日常生活を支援するための特別な教育プログラムや、生活スキルを向上させるための訓練が行われます。
さらに、ASDや知的障がいを持つ人々が社会で自立して生活できるようにするためには、周囲の理解と協力が欠かせません。家族や学校、職場のサポート体制の整備が、これらの人々が社会でのびのびと生活できる鍵となります。
自閉スペクトラム症(ASD)と知的障がいは、共に発達障がいの一種であり、個々の症状や支援ニーズに応じた対応が必要です。ASDは、コミュニケーションや社会的相互作用において困難を抱える障がいであり、知的障がいは知的機能や適応行動に影響を与える障がいです。どちらも早期の診断と適切な支援が、その人の生活の質を大きく向上させる鍵となります。
まとめ
岡田優介さんは、プロバスケットボール選手としてのキャリアだけでなく、家族との時間を大切にしながら、息子の朔玖くんとの日々をインスタで共有し、多くの人に自閉スペクトラム症の理解を促しています。自らの経験を通じて、発達障がいや身体障がいを持つ子どもたちやその家族が心からリラックスできる場を提供したいと考え、これからの未来に希望を抱いています。岡田さんの姿勢と活動は、困難に直面しながらも前向きに生きる力を私たちに示してくれます。
参考
「朔玖がいるからバスケ以外の目標ができた」プロバスケットボール選手 岡田優介さんが語る、自閉スペクトラム症と知的障がいがある5歳の息子が気付かせてくれたこと(HugKum) #Yahooニュース
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