2024.07.01

発達障がい者の「スーパー総務」への道「新・ダイバーシティ経営企業100選」川田製作所の雇用戦略

発達障がいの方でも「スーパー総務」として重用されるケースが増えています。新・ダイバーシティ経営企業100選に選ばれた企業の社長が、採用方針について語っています。

 

一定数以上の従業員を抱える事業主には、障がい者の雇用が義務付けられています。身体、知的、精神の各障がい者の割合を定めた「法定雇用率」は、今年4月に2.3%から2.5%に引き上げられました。企業は従業員40人ごとに障がい者を1人以上雇う必要がありますが、現在の達成率は50%程度にとどまっています。政府は段階的に雇用率を引き上げ、2026年度には2.7%を目指しています。企業側もこの対応が急務となっています。

 

一方で、法定雇用率の対象外の小規模な会社でも、障がい者を純粋な「戦力」として評価し、積極的に採用する取り組みが見られます。公的な優遇制度を活用しながら、人手不足の解消に取り組む現場も増えています。

 

彼女がいないと仕事が回らない

従業員のタイムカードチェックや郵便物の受け取り、納品書や受注票の作成など、多岐にわたる業務をこなしている佐々木彩花さん。神奈川県小田原市のプレス加工会社「川田製作所」で事務員として働いています。高卒で入社して9年目の彼女は、大型のモニターに表示された業務リストを真剣なまなざしで見つめながら、1つずつ確実に業務をやり遂げ、パソコン上のチェックリストで完了ボタンを押していきます。

 

佐々木さんは発達障がいを抱えています。指示された仕事は正確にこなせるものの、曖昧な依頼が苦手だと話します。例えば、「この資料を3~4枚ほどコピーしておいて」と言われると、何枚なのか決められずに混乱してしまいます。そこで事前に「いつ、何をするのか」という一覧表を作成し、それに沿って動いています。

 

インターネットを駆使して自ら学ぶ

川田製作所は従業員20人ほどの小さな会社で、総務担当は佐々木さんしかいません。年末調整の手続きなどもこなしていますが、これはインターネットを駆使して自ら知識を学びました。最近は生産管理の作業にも挑戦し、職域を広げています。業務リストに登録済みのタスクは計115種類に上ります。

 

同社の川田俊介社長は「彼女がいないと回らない。わが社が誇るスーパー総務です」と胸を張ります。佐々木さんも「たいしたことないです」と照れくさそうに笑いながら、「仕事は楽しい。成長できている実感があります」と充実した表情を見せています。

 

実は佐々木さんを採用した際、最終面接に進んだ候補者は3人いて、あとの2人は健常者でした。なぜ、あえて障がいを抱える佐々木さんに内定を出したのか。川田社長はその決め手をこう語ります。

障がいの有無は関係なく、ウチに合うかを考えた結果です。彼女は高校でパソコン部に所属し、就職を見据えてワードやエクセルの資格を取得しています。目標へ向かって努力する姿勢を感じられました

 

5人雇用は必要な人材として選んだ結果

入社当初の佐々木さんは、コミュニケーション面で同僚とうまくいかないこともあったという話があります。そこで川田社長は現場のリーダー格の社員を中心に勉強会を何度か開きました。札幌市がウェブ上で公開している資料「発達障がいのある人たちへの支援ポイント『虎の巻シリーズ』」を用いて特性を学びました

 

佐々木さんからも要望を聞いたうえで、周囲が具体的な指示を出すように心がけると、彼女もそれに応えて懸命に働きました。成果が上がるようになると、徐々に信頼関係が醸成されていきました。その過程で業務の内容を明確化したことで、無駄が減って効率化が進む効果も得られました。

 

資金力が乏しい中小企業には、余計な人員を雇う余裕がありません。そんな中、川田製作所では、佐々木さんを含めて計5人の障がい者が働いています。区分も精神や知的、身体障がいとさまざまです。

 

会社に必要な人材を採用していたら、結果的にこうなった

従業員の少なさから法的な義務は負わないものの、雇用率は法定の2.5%を大幅に超えています。もちろん、1人ひとりが主力として活躍しています。川田社長は「積極的に障がい者を受け入れているという意識はない。会社に必要な人材を採用していたら、結果的にこうなった」と説明します。

 

一方、障がい者ならではの公的な優遇制度をフル活用しているのも事実です。特にメリットを感じるのは、障がい者雇用のトライアル制度です。この制度は厚生労働省が管轄する事業で、障がい者を原則3カ月(テレワークは最大6カ月、精神障がい者は同12カ月)実際に雇ってみて適性を見極められます。期間中は月額最大4万円(精神障がい者の場合は同8万円)の助成金も事業者側に支給されます。

 

「お試し期間で一区切り、その先は結果次第、という認識を事業者と労働者側の双方で共有できるのは大きい」と川田社長は指摘します。当然、中長期的な雇用を見据えた制度ですが、自社にこの人は合わないと判断した際でも断りやすいからです。

 

制度の利用によって自社との的確なマッチングを果たせる

本当にその人材が必要なのか、現場で数カ月かけて見極めるのは、通常の採用活動では難しいです。健常者でも入社後に数カ月の試用期間を設けるのは一般的ですが、解雇するとなれば相応の理由を求められます。実質的には、やる気や適性を見抜くのは面接での限られた会話に頼らざるを得ません。

 

ところが障がい者であれば、制度の利用によって自社との的確なマッチングを果たせます。しかも助成金までもらえます。川田製作所では、トライアル期間中に個人の生産目標を設定し、クリアすれば継続雇用するという形を取っています。これまでに3人の実習を受け入れ、うち1人を採用しました。

 

働く障がい者側にとっても、職場の雰囲気や業務の中身を事前に知れる利点があります。ミスマッチを防げるため定着もしやすいです。「たとえ健常者を雇っても、すぐに辞められたら採用や教育にかけたコストが無駄になります。トライアルを経た障がい者のほうが、そうした人的投資を回収しやすいと思います」と川田社長は言います。

負担だけでなくトータルで考える

さらに、ハローワークなどを経由して障がい者を雇うと、「特定求職者雇用開発助成金」という補助を受けることができます。中小企業の場合、重度の身体・知的障がい者や精神障がい者などを継続雇用すれば、3年間で計240万円が支給されます。これにより初期の人件費を抑えながら、障がい者を戦力化する道筋を立てることができます。

 

障がい者雇用の取り組みが評価され、川田製作所は2018年に経済産業省の「新・ダイバーシティ経営企業100選」に選出されました。また、2022年には厚生労働省による「障がい者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度(もにす認定制度)」にも選ばれました。

 

「かながわ障がい者雇用優良企業」として認定

地元でも、2012年に神奈川県から「かながわ障がい者雇用優良企業」として認定されました。こうした評判から、近年では川田社長に講演会などの依頼が相次いでいます。佐々木さんも「障がい者雇用に熱心と知ったから」と応募の動機を語り、採用面でも有利に働いています。

 

人手不足に悩む企業は多く、特に小規模な事業者の中には、後継者不在で廃業を迫られるケースも増えています。そんな状況を踏まえた上で、川田社長はこう語ります。

「障がい者を受け入れると、最初は現場に負担感も生じると思います。ただ、トータルで考えればメリットのほうが大きいです。法的な義務がない小さな会社でも、選択肢から外すのはもったいないです。人手が欲しいのであれば、まずはトライアルを受け入れてみるのはいかがでしょうか」

 

発達障がいとは?理解と支援の重要性

発達障がいは、発達の過程で現れる脳の機能障がいで、主に3つの種類に分類されます。

 

自閉スペクトラム症(ASD)

  • 対人関係やコミュニケーションに問題が現れやすい。
  • 興味や活動の範囲が限られ、反復的な行動を示すことがある。

 

 

注意欠陥・多動性障がい(ADHD)

  • 不注意、多動性、衝動性が主な特徴。
  • 注意を持続させることが難しく、落ち着きがない行動が見られる。

 

 

学習障がい(LD)

  • 読み書きや計算などの特定の学習分野で困難を抱える。
  • 知的能力には問題がないが、特定の技能習得に困難を示す。

 

発達障がいの原因

発達障がいの原因は完全には解明されていませんが、遺伝的要因や環境要因が複雑に関与していると考えられています。例えば、遺伝的要因が大きな役割を果たす場合もあれば、胎児期の環境や出生後の環境が影響することもあります。

 

発達障がいの診断と治療

発達障がいの診断は、専門の医師や心理士による詳細な評価が必要です。診断には行動観察、面接、標準化されたテストなどが用いられます。治療には以下のような方法が含まれます。

 

  • 行動療法:望ましい行動を強化し、問題行動を減らす方法。
  • 薬物療法:特にADHDでは、症状を管理するための薬が使用されることがあります。
  • 教育的支援:個別の教育プラン(IEP)を通じて、学習障がいを持つ子どもに適切な教育サポートを提供します。

 

発達障がい者の職場でのサポート

近年、発達障がいを持つ人々が職場で活躍するためのサポートが注目されています。以下はその一例です。

 

川田製作所の取り組み

神奈川県小田原市のプレス加工会社「川田製作所」では、発達障がいを抱える佐々木彩花さんが「スーパー総務」として重用されています。同社では、佐々木さんを含め5人の障がい者を雇用しており、その取り組みが評価されています。

 

  • 具体的な指示:佐々木さんには、事前に「いつ、何をするのか」という一覧表を作成し、それに沿って動くことで業務を遂行しています。
  • 信頼関係の構築:具体的な指示と成果を通じて信頼関係を醸成し、効率化を進めています。
  • 公的支援の活用:特定求職者雇用開発助成金などの公的な優遇制度をフル活用しています。

 

発達障がいと社会の共生

発達障がいを持つ人々が社会で活躍するためには、周囲の理解とサポートが不可欠です。企業や教育機関、地域社会が連携し、発達障がいを持つ人々の強みを活かす環境を整えることで、彼らが持つ潜在能力を引き出すことができます。

「障がい者を受け入れると、最初は現場に負担感も生じることがありますが、トータルで考えればメリットのほうが大きい」と川田社長が語るように、発達障がいを持つ人々の雇用は企業にとっても大きなプラスとなり得ます。

まとめ

発達障がい者の雇用には、企業側のサポート体制や環境整備が欠かせません。しかし、川田製作所のように、彼らの特性を理解し適切に支援することで、発達障がい者は企業の貴重な戦力となり得ます。

人手不足に悩む企業にとって、障がい者雇用は新たな可能性を拓く手段です。まずはトライアル雇用を通じて、その可能性を試してみることが大切です。川田社長の言葉が示すように、総合的な視点で考えれば、発達障がい者の雇用は企業にも多くのメリットをもたらすでしょう。

 

参考

発達障がいの人でも「スーパー総務」と重用 「新・ダイバーシティ経営企業100選」企業の社長が語る採用方針(東洋経済オンライン) #Yahooニュース


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