2024.06.24

ADHD傾向のある10歳の子どもに対する適切な接し方とは「ウソはダメ」の声かけはあまり効果がない?

買い置きしていたお菓子を勝手に食べたのか尋ねても、「僕じゃない」と嘘をつく10歳の男の子。ADHDの傾向がある彼に対して、単に「ウソはダメ」と言うのではなく、どうすれば良いのでしょうか。

教育家で見守る子育て研究所所長の小川大介さんは、「子どもが食べてしまう前の気持ちにアプローチすることが重要です」と指摘します。AERA with Kids+の連載「小川大介の『才能が見つかる!』子育て相談」では、嘘をつく背後にある子どもの心情に注目し、親としての適切な対応方法を探ります。編集長の鈴木顕が読者の悩みに小川さんの意見を聞きました。

 

相談内容

発達障がいグレーゾーン、ADHD傾向のある10歳の息子がいます。買い置きしているお菓子やパンを私に黙って食べ、ゴミをテレビの裏などに隠してしまいます。後日、そのゴミを見つけて「誰が食べたの?」と聞くと、「僕じゃない」と嘘をつきます。

4人兄弟の長男で、下に8歳の長女、5歳の次男、2歳の次女がいますが、弟や妹のせいにするわけでもなく「俺は知らない、やってない」と常に言い張ります。長男がそういう言動をとるせいか、弟や妹もよく嘘をつきます。どのような対応をすると良いのでしょうか?

 

お子さんについての情報

好きな遊びはYouTubeを観ることや走り回ること。褒められると顔が柔らかくなり、周りに自慢します。得意・好きなことは図工と身体を動かすこと。公園で遊ぶ時は走り回り、年下の子どもがいるとお世話をし始めます。弟妹と一緒に行くが、一人遊びが好き。初めての場所に行く時は「ママと一緒じゃないといや」と言って離れません。誰でもいいから付き添いが必要で、不安がっている様子です。

 

身体感覚をよく使うタイプは「味覚」への反応も鋭い

これまでの経験から、ADHDやグレーゾーンと診断されるお子さんは「好奇心を爆発させるタイプ」が多いです。視覚的な情報に反応しやすく、好きなものに対して体がすぐ動く特徴があります。相談者のお子さんも、視覚と身体感覚の反応が高いタイプと推測します。

 

好奇心爆発タイプの特徴

学びの傾向としては「好奇心爆発タイプ」であり、行動の傾向は朗らか社交型、あるいは和気あいあい型です。人と関わったり、一緒に何かすることが好きで、人を気遣うこともあります。他人のことが気になるため、優しくすることもあれば、人からどう見られるかを気にしてモジモジする部分もあります。

 

それと、身体感覚をよく使うお子さんは「味覚」への反応が鋭いことが多いんです。「味わう=体を使う」ことなので。きっとこの子は、お菓子を見た瞬間に頭の中でその味が再現されていると想像します。考えるよりも体がすぐに動くタイプでしょうから、気がついたら食べてしまっているのでしょう。

 

子どものウソ、その心理とは?

お母さんに「知らない」とウソをついた、とありますが、これは子どもが意図的にだまそうとしているのではなく、「なかったことにしたい」という気持ちが働いているのではないでしょうか。きっと本人も困っているのだと思います。おそらく、半分くらい食べたところで「やっちゃった!」と気づき、手に残った包み紙をどうしようかと悩み、最終的に自分の目から見えなくなるテレビの後ろに隠してしまったのでしょう。

 

「ウソ」ととらえるかどうかが重要

今回のお子さんの言動を「ウソ」ととらえるかどうかが重要です。この場合は、まず善悪を判断する前に、「食べちゃったね」とお子さんのその瞬間の心の動きをそのまま共有してあげるのはどうでしょうか。そうすることで、お子さんも「やっちゃった」とは認められるかもしれません。

そのうえで今後どうするかを相談することが大切です。この子は人との関わりを好むタイプのようなので、「黙って食べたらお母さんは悲しいから、やめてね」と伝え、お子さんが無意識に手を伸ばしたときに、親の寂しそうな顔を連想させるように記憶に結びつけると、一定の制御がしやすくなります。

 

隠さなくてすむように練習していく

ただ、それも100%の効果は期待できませんので、「またやっちゃったら教えてね。その時はお菓子を手の届かない場所に移動しようか」と対応策を伝えておくことも必要です。「パパやママに嫌われちゃうかな、がっかりさせるかな」と自分がどう思われるかが気になるかもしれないので、やってしまった後の対応策を伝え、その不安を和らげてあげることが大切です。

「約束を破ったのはよくないけど、やってしまったことは報告してね。隠して、なかったことにするのは寂しいからやめようね」と伝え、隠さなくてすむように練習していくことで、だいぶ状況が変わるのではないでしょうか。

まだ10歳で、体の反応が強いタイプのお子さんに「食べちゃダメよ、ウソはダメよ」と言うのは、「自分でその反応をなんとかしなさい」と言うのと同じで、それは難しいと思います。意思を持ってやっている場合は考えを改めれば行動も変わりますが、「体の反応」に対して理屈は無力です。

 

身体感覚タイプは、ルールより「共感」が効く

実は「やっちゃダメ」と禁止する方法が効果的なお子さんは限られています。聴覚をよく使い、言語的なものに反応が高い子どもは、ルールや手順を好むため、決まりごとに対して行動としてつなげやすいです。しかし、今回のように視覚や身体感覚をよく使うタイプの子どもには、ルールや禁止があまり効きません。理解はできても、体の制限につながらないことがあるため、共感したり、「ウソをつかない自分でいたい」と思えるような励まし方をしたりするほうが合うでしょう。

 

共感とサポートの重要性

「禁止」と言われた場合、子どもはやってしまった後に逃げ場がなくなり、ウソをつくか逃げるかしかなくなってしまいます。多くの親御さんは、「それはしていい、これはするな」と行動の部分だけにアプローチしがちですが、子どもは頭と心が動き始めてから行動に移します。したがって、行動を変えるには「その前段階の頭と心の反応にアプローチする」必要があります。

 

よくない行動の中にある頑張りを認める

例えば、子どもがよくない行動をした場合、その中にも頑張りや努力があることを認めてあげます。そして、「あと少し気をつけたらできるよ」と、うまくいく未来の話を必ず入れます。次に、「次はこうしたらどうかな」というお子さんが選べる行動を一緒に考え、そこには親の笑顔や安心感があることをセットで伝えてあげると、状況は変わってくると思います。

ADHDとは何か?

ADHD(注意欠如・多動性障がい)は、注意力の持続が難しかったり、多動性や衝動的な行動が特徴の発達障がいです。子どもだけでなく、大人にも見られる障がいで、日常生活や社会生活に影響を及ぼすことがあります。

 

ADHDの主な特徴

ADHDの特徴は大きく分けて3つのカテゴリーに分類されます。

 

注意欠如

  • 細かいところでの不注意やミスが多い
  • 集中力が続かない
  • 話を最後まで聞かない
  • 指示に従わず、課題をやり遂げられない
  • 物をなくしやすい
  • 忘れ物が多い

 

多動性

  • 座っていることが難しく、動き回る
  • 静かに遊ぶことができない
  • 過度におしゃべりをする

 

衝動性

  • 質問が終わる前に答える
  • 順番を待つことが難しい
  • 他人の会話やゲームに割り込む

 

ADHDの原因

ADHDの正確な原因はまだ解明されていませんが、遺伝的要因が大きく関与していると考えられています。脳の特定の部位の機能不全や神経伝達物質の異常も関係している可能性があります。

 

ADHDの診断

ADHDの診断は、専門の医師や心理士による評価が必要です。診断には、詳細な問診や行動観察、アンケートなどが用いられ、症状の持続性や生活への影響を総合的に判断します。

 

ADHDの治療と支援

ADHDの治療は、薬物療法と行動療法が主な方法です。

 

薬物療法

  • ストラテラ(アトモキセチン)
  • コンサータ(メチルフェニデート)
  • インチュニブ(グアンファシン)

これらの薬は、注意力の向上や多動・衝動性の軽減に効果があります。

 

行動療法

  • 認知行動療法
  • ソーシャルスキルトレーニング
  • 親子でのカウンセリング

行動療法は、日常生活の中での具体的な行動改善を目指し、親や教師も協力してサポートを行います。

 

ADHDを持つ子どもへの対応方法

ADHDを持つ子どもへの対応には、共感と理解が重要です。以下のポイントを参考にしてください。

 

環境を整える

  • 静かで集中しやすい環境を作る
  • 必要な物を整理整頓する

 

明確なルールを設定する

  • シンプルで分かりやすいルールを設ける
  • ルールを守ることの重要性を繰り返し伝える

 

ポジティブな強化

  • 良い行動を見逃さず、褒める
  • 小さな成功を積み重ねる

 

適切なフィードバックを与える

  • 行動の結果について具体的なフィードバックを行う
  • 失敗したときは責めず、次にどうすれば良いかを一緒に考える

まとめ

親として子どもの行動に悩むことは多々ありますが、特にADHD傾向のある子どもに対しては、共感と理解が非常に重要です。ルールや禁止を強調するよりも、子どもの気持ちに寄り添い、適切なフィードバックを与えることが、長期的な行動改善に繋がります。今回の相談事例からも分かるように、親の接し方一つで子どもの心の動きや行動は大きく変わる可能性があります。共感を持ち、温かく見守りながら、子どもの成長を支えていきましょう。

ADHDは、多動性や注意欠如、衝動性が特徴の発達障がいですが、適切な治療と支援を受けることで、日常生活をより円滑に過ごすことが可能です。子どもや大人にとって、それぞれの特性を理解し、共感を持って対応することが重要です。社会全体での理解とサポートが、ADHDを持つ人々の生活を支える鍵となるでしょう。

 

参考

お菓子を勝手に食べて「僕じゃない」と言う10歳男子 「ウソはダメ」の声かけはあまり“効果がない”と専門家が話す理由(AERA with Kids+) #Yahooニュース

 


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