2024.06.17

「発達障がい専門」フリーペーパーが創刊から部数3倍!編集長が語る「当事者だからこそわかる」

2019年に刊行された『日本公衆衛生雑誌』に掲載された「発達障がいに対する成人の認知および情報源に関する現状」という調査(2016年)によれば、発達障がいを「聞いたことがある」と回答した人の割合は91.5%に達しています。

発達障がいの認知度は極めて高いものの、その実態については学校やニュースで知る程度で深く理解していない人も多いのではないでしょうか。そんな中、発達障がいに特化したフリーペーパー『凸凹といろ。』があります。

 

発達障がいに特化したフリーペーパー

このフリーペーパーは2023年2月に創刊され、年4回刊行の季刊誌としてスタートしました。現在の発行部数は創刊時の約3倍にあたる6000部にまで増加しています。『凸凹といろ。』の企画、デザイン、編集を一手に引き受けているのは、大阪在住のフリーランスデザイナー“ゆーさん”(35歳)です。

 

人気を集めるまでの経緯について、編集長であるゆーさんにお話を伺いました。彼女が語る成功の秘訣は「当事者だからこそわかる」視点にありました。発達障がいに関する知識や経験を元に、読者の共感を得ることを目指した記事作りやデザインが功を奏したのです。

 

「自分も発達障がいを抱えているので、同じような悩みや困難を抱える人々に寄り添いたいという気持ちが強かった」と語るゆーさん。その思いが『凸凹といろ。』の人気を支え、広がっていると言えるでしょう。

発達障がいへの理解を深め、当事者やその家族に役立つ情報を提供する『凸凹といろ。』は、今後もさらなる成長が期待されます。

 

「典型的な発達障がいですね」と診断

そもそも、ゆーさん自身も発達障がいの当事者の一人です。彼女が最初に症状を自覚したのは20代の頃だったと言います。

「20代に入ってすぐ、頭が悪いわけじゃないと思うのに、なぜこんなに勉強ができないのだろう? なぜ人付き合いが上手くできないのだろう? と悩んでいました。一人暮らしをしていた時は、家の中がゴミ溜めのような状態でした」ほどなくして病院を受診し、発達障がいと診断されたのです。

 

「当時、mixiが流行っていて、日々の悲しい出来事や思いをいろいろと投稿していました。それを見たのか、発達障がいに関する広告がよく表示されるようになったんです。『朝起きられない』『人を怒らせてしまう』といった症状が書かれていて、病院に行ってみると『典型的な発達障がいですね』と言われました

 

フリーペーパーにしたのは「医療施設に置いてもらえるから」

『凸凹といろ。』発刊のきっかけは、2022年に自身が運営しているLINEのオープンチャットだったと言います。「オープンチャットで発達障がいのコミュニティを運営していて、そこに大阪で発達障がいカフェバーをオープンしたいという男性が現れました。同じ大阪でそういう居場所を作ってくれることが嬉しくて、仲間意識が芽生えました。しかし、『DDbugs』という店名でオープンして1か月ほど経った頃から、お客さんが来ない日が出てくるようになってしまいました。それで宣伝方法を考えたとき、自分が以前からやりたいと思っていたフリーペーパーの発行を思いついたんです」

 

フリーペーパーを選んだ理由として、ゆーさんは他にもこう述べています。「フリーペーパーなら、読み物や情報として人々に読んでもらえるし、設置場所もそのつもりで置いてくれるからです。通常のチラシでは絶対に入り込めないような、当事者が集まる自助会や関連のある医療施設などにも広告を設置できるのが大きな理由でした。医療施設では絶対に飲食店のチラシなんて置いてもらえませんから。そういった宣伝協力という意味でも、フリーペーパーという媒体は強いと思っていました」『凸凹といろ。』は、こうした背景と工夫から誕生し、広がっていったのです。

 

自身の経験が発刊の原動力に

『凸凹といろ。』は、発達障がいに対する知識を広めたいという強い思いから生まれました。その発刊には2か月の準備期間が費やされました。

 

「2号までは完全に自前でやっていました。取材や執筆依頼、デザインはもちろんのこと、設置のお願いや広告掲載の営業、冊子の発送作業も含めて全てです。それでも3号あたりから共感してくださる方が出てきて、校正などを手伝っていただけるようになりました。4号からは執筆などで関わってくださる方が増えてきましたね」

 

多様なコンテンツと共感の輪

『凸凹といろ。』の中身は当事者インタビュー、専門家の連載、体験レポート、コラムなど多岐にわたります。現在6号まで発刊されており、インタビュイーや記事執筆者の多くは発達障がい当事者です。「ありがたいのですが、中には急に連絡が取れなくなって、いなくなることもあります」と、ゆーさんは快活に笑います。

 

「しょうがないから他の原稿に差し替えてバタバタ作って、発行した後に『すみませんでした、しんどくなっちゃって』みたいなこともありますね。初めて直面した時はめちゃくちゃパニックになりました」

批判や誤解にも負けずに

発行部数を3倍近く増やすまでには相当な苦労があったはずです。大きなトラブルや批判について尋ねると、ゆーさんはこう答えました。

 

「批判だなって思うほどの批判は実はまだないですね。距離感を間違えたり、関わり方や言い方を失敗したりとか、私がミスってトラブルになったことはありますよ(笑)。ただ、一番ショックだったのは、利益はほとんど出てないのに『金の亡者だ』って言われたことですね。あとは単純に勘違いで『反社の人と付き合いがある』という話をされたこともあります」

 

波乱万丈の人生から学んだこと

達観した様子のゆーさんですが、小学校以外まともに卒業していなかったり、転校先の中学校でスクールカーストに巻き込まれていじめられたりと、過去にはつらい経験もありました。

 

「多動性障がい(ADHD)があるので、よくわかんない動きして悪目立ちするんですよね。高校に入っても、身体が重くて朝起きられず学校に行けなかったり、登校途中に別のところに行きたくなって、そのまま遊びに行ったりしました。美術の学校も、課題の提出期限を守れなくて結局留年して辞めて、通信学校に転校してやっと高校卒業資格を取りました。

 

『私はこういうものだ』

「経歴もめちゃくちゃで、20代の間は水商売ばかりしていましたし、詐欺に遭ったこともあります。でも、生きていればなんとかなるんですよね。なので、自分がこれから何ができるのかみたいなことを考えてほしいなって思います。発達障がいはいくら落ち込んだって結局治らないので、開き直って『私はこういうものだ』って受け入れて周りの人に伝えていくほうがきっと楽なんじゃないかなって思いますね」

『凸凹といろ。』の成功は、ゆーさんの経験と情熱、そして共感の輪によって支えられているのです。これからも、発達障がいに対する理解を深めるための重要な役割を果たし続けることでしょう。

 

発達障がいへの理解を求めて

発達障がいに対する世間のネガティブなイメージについて、ゆーさんに尋ねてみました。「ネガティブなイメージはしょうがないですよ。私自身の過去を振り返ってみても、迷惑かけてたなって思いますもん。ただ、お互いが知らないから怒っている部分もあると思うんです。当事者も自分の特性を知るべきだし、健常者もそれを知ってほしいですね。『こうしてほしい』という希望を言い合うだけで、お互いを知るところまで歩み寄れていないから大変なことになっている印象があります。

 

発達障がいの前提を共有していれば、職場でも『これが苦手らしいから、得意なことだけをやらせてあげよう』とかできますよね。例えば、私のようなタイプだったら『いつ仕事に来てもいいし、在宅でやってもいいから、期限にだけは間に合わせてね』って言ってくれたら、すごく楽に仕事ができたりします」

 

フリーペーパー運営の裏側

フリーペーパーを運営するには、当然原稿料や印刷代などの制作費がかかります。お金の問題についても気になるところです。

 

「実はポケットマネーからの持ち出しはないんですよ。創刊号は知り合いの小説家に出資してもらいましたし、今は広告掲載だけで回っています。私の作業時間を考えたら大赤字ですけどね(笑)。それでも広告掲載が増えてきていますし、『凸凹といろ。』を季刊誌として定期的に発行していることがそのままポートフォリオになって、私自身の信用にもつながっています。

 

 出稿企業様がそのまま別の仕事をくださることもあり、さまざまな面でプラスに働いています。だから『凸凹といろ。』だけで収益を出そうとはあまり考えていないですね。ライターや営業の方にはお金ではなく物で対価を差し上げています。単発でプレゼントを贈ったり、特に頑張ってくださった時はギフトカードをお渡ししたりしています」

 

継続する原動力

スタッフが音信不通になったり、多少の誹謗中傷を受けたりする苦労もある中で、それでも発行を継続する原動力は何なのでしょうか。

 

「インタビュイーや執筆してくださる方が目的や夢を持っていて、楽しく前向きにやっているのを見てほしいからです。発達障がいの人って、他人の機嫌を損ねたり、仕事でとんでもないミスをして鬱になったり、パワハラに遭ったりすることが一度はあると思うんです。そういう状況に陥っていた人たちがどうやって前向きになるきっかけを得たのか、その“過程”を知ってほしいです

 

記憶に残る記事

最後に、『凸凹といろ。』の中で特に印象に残っている記事について、ゆーさんに伺いました。「いろいろな記事があってどれかひとつを選ぶのは難しいですが、田邉友也先生の『医療従事者の立場からみた、発達障がいにまつわる雑感』という連載の評判はよく聞きますね。トラウマインフォームドケアを推進している看護師の先生です。難しい文章を書かれるんで、苦手な方もいますが、当事者の方にも、支援者の方にも参考になると言われています

 

継続する理由

多少のトラブルを織り込み済みとした上で、『凸凹といろ。』の定期発行を継続しているゆーさん。彼女の活動は多くの共感を呼び、発達障がいに対する理解を深める一助となっています。

『凸凹といろ。』は、鮮やかで不思議と手に取りたくなる冊子です。そして、そんな冊子を作り上げるゆーさん自身にも独特の魅力がありました。(取材・文/延岡佑里子)

 

【ゆー】

大人の発達障がいがテーマの無料情報誌『凸凹といろ。』編集長・ADHD当事者。発達特性を起因とする問題の多さから、企業勤めを早々に諦め、ほぼ独学で学んだデザイン、イラストを本業とし、役者の経験を活かしたナレーションなど、フリーランスとして働いている。公式ホームページ『凸凹といろ。』。X公式アカウント:@dekobokotoiro

【延岡佑里子】

障がい者雇用でIT企業に勤務しながらの兼業ライター、小説家。ビジネス実務法務検定2級、行政書士試験合格済み。資格マニアなのでいろいろ所持している。バキバキのASD(アスペルガー症候群)だが、パラレルキャリアライフを楽しんでいる。Xアカウント名:@writer_nobuoka

まとめ

『凸凹といろ。』は、発達障がいに対する理解を深め、前向きな姿勢を持つきっかけを提供する場として、今後もその役割を果たし続けることでしょう。ゆーさんの情熱と共感の輪が支えるこのフリーペーパーは、発達障がいを抱える多くの人々にとって、大きな力となっています。彼女の活動がさらに広がり、多くの人々の心に届くことを期待しています。

 

参考

“発達障がい専門”のフリーペーパーが創刊から部数3倍に。編集長に聞く「当事者だからわかる」成功の秘訣(週刊SPA!) #Yahooニュース


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